ファンさんいわく、金大中大統領は通貨危機克服の秘策として文化産業が重要であることを予見していたそうで――(写真提供:Photo AC)
なぜ韓流文化は世界を席巻したのか?ドラマ『冬のソナタ』が韓流ブームを巻き起こした「韓流元年」=2003年から20年が経過し、韓国コンテンツは世界中で人気を集めています。日韓コンテンツビジネスに現場・研究の両面から携わり続けているコンテンツプロデューサー、黄仙惠(ファン・ソンヘ)さんは、韓国コンテンツビジネスがグローバルなIP制作・展開体制を築くまでの変遷を辿るとともに、躍進の秘密に迫っています。そのファンさんいわく、文化産業は創造力によって、新たな雇用と国民所得を増加させることができる分野だそうで――。

通貨危機で失ったモノと得られたモノ

韓国の近代史において、韓国と韓国人にとって朝鮮戦争の次に大きな事件が、1997年の通貨危機とIMFによる救済だ。

1988年のソウルオリンピックを機に急成長した韓国経済は、10年後に大きな危機に見舞われた。

失業者が急増し、学校や幼稚園に通えなくなった学生や子どもが発生、朝鮮半島の人々の日常生活が根本から変わってしまった。

通貨危機によってもたらされた大量の失業、大量の不動産売却、金融不安の後に行われたIMFの救済措置は経済の再構築と大きな構造改革につながった。

私が制作スタッフとして携わったテレビ番組『世界は広い』は、各国の文化や歴史、社会を紹介する教育番組だったが、その時期には多くの苦情が寄せられた。

国や国民が苦しんでいるときに、海外旅行を誘発し感情をあおるような番組を制作する公共放送に対する抗議であった。

そのような意図で作られたものではないが、当時はどうしてもそのように受け取られてしまったのである。