これだけ本が愛されている国は珍しいのに

清水:そもそも僕が今回本屋さんに興味をもったきっかけが、六本木に住む友達の家へ遊びに行ったとき、駅にあったはずの書店(ブックファースト六本木店)がいつの間にか”すしざんまい”にかわっていたのを見て。驚いたというか、ショックを受けまして。

――コロナ禍の中で残念ながら閉店しましたね。

清水:僕自身は本が好き、本屋さんが好きで。通っていた小学校の隣が図書館で、ずっとそこにこもっていたこともあって、気が付けば本に囲まれて暮らしてきた。でもじゃあ今は、といえば、やっぱり本屋さんに足を運ぶ機会は減っている。よく行く秋葉原だと、ヨドバシAKIBAの中に有隣堂があったけど……。

竹田:あそこも閉店しました。23年1月に。

清水:だよね。自分はエンジニアであると同時に、物書き的な仕事も長くしてきていて、今もブログを書いたり、メディアに連載を持っている。ただ、ネットに情報が溢れている分、『本』という媒体そのものは、かつてほどエンジニアが手に取らなくなってきたし、彼らが書く機会も減った。

竹田:なるほど。

本を模したドアを開くと、選び抜かれた本がびっしり。双子のライオン堂の店内(写真:竹田信弥さん)

清水:でも、技術者向けの同人誌即売会をやると、それはもう、驚くくらいに人が集まってくるんです。その都度、本はもういらないんじゃなかったの? って思わされるわけだけど(笑)。きっと本を作るって行為自体が好きなんですよね、日本人は。

竹田:よくわかります。

清水:僕はこれまで、海外で開催されている、ある程度の規模のコミケには行ける限り、足を運んで来たんですが、自分で本を作って売る、っていう行為をここまで盛んにやっているのはやっぱり日本人くらいじゃないかな。自ら本を出すことが大きな文化になっている国はないと思うし、これだけ本が愛されている国は珍しい。

竹田:確かに。

清水:でも現実として紙の本はかさばるし、家の本棚にも限界があるから、電子書籍を買ったり、古本屋さんに売ったりしながら厳選せざるを得ない。そうこうしている間に、大事なものを僕たちは失ってしまうんじゃないかって。でも、新刊を扱う本屋さんが儲からないことには薄々気づいているし、どうにかならないのかなと。