本を仕入れて売る、ということ

清水:ただ、竹田さんと話しているうちに、本そのものを売る、っていうことにこだわり過ぎなくていいような気もしています。本屋を維持するために、持続可能な仕組みを作る、という意味では、ほかの方法もあるのかもしれない。本を自ら売ろうとして取次と口座を開くにしても、実績とかやる気とか聞かれるに違いないし、小規模でやろうとすればハードルが高そうだし。

今回の対談は書店の「双子のライオン堂書店」のバックヤードで行いました(写真:編集部)

竹田:やる気は聞かれません(笑)。とにかく資金ですかね。たとえば、ざっくり言って「取次を通じて本を借りる」ということを指す『委託販売』の場合、特に最初は考えている蔵書の3倍くらいの資金が必要になるはず。僕の場合、20代で始めようとしたから、とてもそんなお金は用意できなくて、委託販売は諦めました。

清水:やっぱりハードルが高いんだなあ。

竹田:でもそれは結構“あるある”で。大手取次とやりとりを始める上で、よく聞く話です。小さい取次なら『買い切り』でやってもらえるので、買った分だけのお金が用意出来ればいい。なのでハードルは低くなります。紹介とかを通じれば、口座も開きやすいし。もちろん、条件やらの確認は事前にしっかり必要ですが。

清水:『買い切り』だと高くなるんですか?

竹田:基本的には『委託販売』と一緒です。本の場合、利益率は変わりませんから。なので買い切りをするなら、取次を通さず出版社と直接、っていうパターンも増えています。いまは信頼関係ができていれば、ほとんどの出版社が対応してくれるようになりました。

―――いわゆる「直取引」ですね。

清水:取次を経由しないことで利益があがるのなら、その方がいいんじゃないんですか?

竹田:そうは言いきれません。取次は、本屋にとっては基本的にロジスティクス機能と支払いの取りまとめを負担してくれていて。出版社と直で本を取引すると冊数によっては『送料はそちら負担で』といった条件のところも。なので、本を各社からちょっとずつ仕入れたい、となれば取次経由の方が書店にとってメリットはあるわけです。また仕入れ先それぞれに振り込むと手数料だけでバカにならない。うちは本ごとに、どちらの方が条件的にいいかを考えながら仕入れたりしていますが。