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かつて女性の辛さは「女三界に家無し」と表現されました。しかし現代、「本当に住む家が買えない、借りられない」という危機的状況に直面するケースも増えています。そして男女雇用機会均等法で社会に出た女性たちが、会社勤めをしていればそろそろ一斉に定年を迎える時期に…。雇均法世代である筆者は57歳、夫なし、子なし。フリーの記者・編集者。個人事業主ではあるが、見方によっては「無職」。ずっと賃貸派だった彼女が、60歳を目前に「家を買おう」と思い立ち、右往左往するリアルタイムを、心情とともに綴ります。
この記事の目次
自分の子じゃなくても、三親等以内ならいい
75歳以上になって本当に住まいに困ったら 判断理由は非開示、ブラックボックスの中 コロナは不動産業界を変えた

前回「民間賃貸で大丈夫?(上)~金額には訳がある、内見せずに決めてはいけない」はこちら

自分の子じゃなくても、三親等以内ならいい

(前回から続く)さて。懸案の「何歳まで民間で賃貸を借りられるのか」問題ですが――。

2月の別の日曜日、今度は、私鉄沿線C駅近くの不動産屋に行きました。周辺環境について聞き込むためです。事故物件、再開発予定やご近所トラブルなど、「ネットには出てこない、地元民しか知らない情報」は、地元の不動産屋が一番よく知っています。あれこれ聞くうち、本音トークを切り出してみました。

「ところで、ぶっちゃけ、どう思います? 私はいま57歳で、フリーランス、独身、子なし、一人暮らしなんですけど、こんな条件でも、民間の賃貸って借りられますか? 今はまだセーフだとしても、将来、民間賃貸は借りられなくなっちゃうんじゃないですか? 民間の賃貸って、ほんとのところ、何歳まで借りられるんですか? 『いずれ借りられなくなるから、ローンが組めるうちに購入しちゃった方が良い』っていう話も聞きますけど、本音ではどう思います? 買えるなら、買っちゃったほうが良くないですか?」

不動産屋のおじさん(というと失礼ですね、たぶん私よりずっと年下で、まだ40代)は、大きなお腹を揺らして微笑みました。「自分も独身で賃貸派ですけど、ずっと賃貸でも大丈夫、って思ってます」と。そうですか、ご同類でしたか。では私も?「全然、大丈夫ですよ。まだ50代ですよね? 借りられますよ。年齢制限がひっかかってくるのは、70歳くらいからです。さすがに75歳を超えると、新規に賃貸契約を結ぶのは難しくなりますけれど。でも、80歳を超えたら、代理契約という方法もあります」。代理契約とは、高齢の入居者に代わって、身内が代理人となって契約を結ぶものだそうです。

「でも、私は子どももいないし……」と言うと、おじさんは教えてくれました。「自分の子じゃなくても、三親等以内ならいいんです」。姪か甥でいい、ただし、何かあった時に連絡したらすぐ駆けつけられるくらい、近くに住んでいれば、とのことです。「何か」とはつまり、部屋で倒れたとか亡くなったとかでしょう。「万一の時に対応してくれる、民間の生前契約ではダメなんですか?」と聞くと、ものによるとのこと。むしろ生前契約が必須の物件もあるそうです。