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かつて女性の辛さは「女三界に家無し」と表現されました。しかし現代、「本当に住む家が買えない、借りられない」という危機的状況に直面するケースも増えています。そして男女雇用機会均等法で社会に出た女性たちが、会社勤めをしていればそろそろ一斉に定年を迎える時期に…。雇均法世代である筆者は57歳、夫なし、子なし。フリーの記者・編集者。個人事業主ではあるが、見方によっては「無職」。ずっと賃貸派だった彼女が、60歳を目前に「家を買おう」と思い立ち、右往左往するリアルタイムを、心情とともに綴ります。

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不動産は何かを妥協しなくちゃ決められない

(前回から続く)
不動産仲介業者のベテラン営業マンT氏には、その後の約3週間に2回、計4軒の内見に連れて行ってもらいました。この間、私は毎日毎日、朝晩、不動産ポータルサイトと大手業者のホームページをチェックし、新着物件や値下がり物件がないか、それこそ目を皿のようにして見ていました。ですが、真剣に「自分が住む物件」として見るようになって2週間ほどで、私は気付いてしまいました。私の予算で、買いたい・買えるような物件なんて、私の希望エリアには存在しない、という事実に。

よく「100%理想の家なんてない」と聞きます。不動産は何かを妥協しなくちゃ決められない、と。それは承知していますが、私が想定した2000万円台(いつの間にか、2000万円「まで」が2000万円「台」になっていました)では、そもそも、私の希望エリアには物件が存在しないのです。

予算2000万円を2500万円にしたところで、背伸びをして3000万円まで頑張ってみても、ありません。もともとファミリー層向けの大型物件が多く、単身者や二人暮らし向けの60平米より小さい部屋が少ない街なのです。築浅どころか、新耐震(1982年以降)の物件も、高くて手が出ません。

古くないと高すぎて買えないけれど、古いと銀行からの融資がおりません。私の買える安い物件には融資がつかず、融資がつくような新しい物件は私には高すぎる、っていうことです。ということは、……結局、買えないんじゃん!と、落ち込みました。前回、ローンが組めると聞いて、あれだけ舞い上がったのに。しかも古い物件のほうが、駅近や南斜面などの好立地にあります。自分の予算で購入できるのは古い遠いあまり良くない立地の物件だけです。駅から徒歩18分のマンションは許容できそうでしょうか、歩いて24分ならどうでしょう。……がっくり、です。

前に話を聞いた不動産の担当者の言葉が脳内に蘇ります。「不動産は本気で探すと3ヵ月で必ず決められる。もし物件が出なかったら、それは設定した条件の何かが間違っていたからだ。予算か、エリアか、なにか条件を変えないと、そのまま一生、物件は出ない」と。その通り、このままでは私は、買いたい物件とは永遠に出合えないでしょう。今年中に決める、と期限を決めているのに。