「した!」は日本の野球の常識?

というのも、いくらなんでも高校生はこの略語の元々の言葉を知っていて、わざと
「…っだあ!」
「したっ!」」
と略して言うことに何かきちんと意味があるのだとしたら、私はその説明に納得して、心ゆくまで彼らの野球に声援を送りたいのである。わざわざ相手チームと向き合ってかける言葉なので、試合の前とあと、相手に礼を尽くした素敵な言葉をかけあっているのだと、私は信じたい。

けれどこれまで学童野球チームに長くいたなかで、生まれて初めて野球に接する子供たちをたくさん見てきた。まだ野球のルールも覚えるか覚えないかくらいの小さな子供が、当たり前のように、試合前の整列で「やー!」とか「したっ!」とか言っているのを見て、わたしの中ではツッコミどころ満載だったのである。

なんだ?したー!って。

おつかれさまで…したー!なのか、
ありがとうございま…したー!なのか、
今日は朝ごはん食べてきませんで…したー!なのか、もしくは、
かるーく勝てると思って来ちゃいま…したー!なのか。

ちなみに試合の前とあと、発する言葉が変わるわけではなく、いずれも「した!」だったり「どぅわー!」だったり。
とにかくめちゃめちゃ威勢のいい元気な声で言うわりに、まったく意味不明なのだ。

わたしの中ではツッコミどころ満載の子どもたちのかけ声

あとから気がついたのだが、これは学童の次に進む少年野球、高校野球の先輩方から降りてきた習慣のようで、まだ学童野球の子ども達は
「あーっしゃっしやっ!(ありがとうございました)」と長めなのに対して、中学高校の選手たちはついには「した!」
「だぁっ!」になっていたりする。

ぜひ、中学生野球以上のお兄さんたちの整列の挨拶に注目していただきたい。
本当に、短いです。
でもコレは、日本の野球の常識なのですね?

そこである時、いちおう言葉を生業にしていた私から、母親として息子たちに課題を出してみたことがある。
「あーっしゃっしゃ!」
これは誰になんて言っている挨拶なのか、チームのみんなに聞いてみてごらん?

チームで初めて試合に出た時、上の学年の子達の列の一番端っこに並んで、訳も分からず上の子達が言うのを真似して言っていた挨拶。
でもこれ、本当はなんて言っているのか知らないようだった。
でも上の子達がゲームの前に言う言葉だから、なんだかかっこいい。
いつのまにかゲームの前に一列に並んで「あーっしゃっしゃ!」
意味はわからないまま、ずっとおまじないのように唱えている言葉でしかなかった。