翌日は日曜日だが来てくれた。思っていたより大ごとだった。ホースの問題ではなくて排水口の問題であり、いちばんの問題は、猫のトイレが人間のトイレの中にあり、人間のトイレとお風呂場が直結して、そこに洗濯機が置いてあることだと言われた。
ついでにシャワーも直してくださいと言いだしたのはあたしなのだ。もう十何年もシャワーが使いにくくてしょうがなかった。
水まわり屋さんは言った。「ああこりゃだめだ、今月末にカタログの値段がぐんと上がるんです。今やっといた方がおとくです、安いやつでいいんですよ、ほらこんなの」
「こういうデザイナーズマンションというのは、見かけはいいけど使い勝手は悪くて、部品にお金かけてあるけど外国製のものが多くていったん壊れたら手に入らないし」
「シンクももうかなりさびてつまりかけてますよ。一番いいのはユニットバスにしてトイレとお風呂を離し、ドラム式の洗濯機をやめて、普通の縦型の洗濯機を買うことですよ。乾燥機付きじゃなければ安いですよ」
たしかにこの家、使いにくいことは使いにくい。長年住んで使いにくさに慣れちゃったのである。家の間取りもまともとは言えず、おもしろくて好きなのである。トイレもお風呂場も広くて明るくて、規格品のユニットバスがはめこまれた規格品の家(父のところもそういうマンションだった)には、もはや住みたくないのである。
ともかく排水口とシャワーで15万数千円。降って湧いた出費であった。
水まわり屋さんは大柄の若い男で、「安いやつでいいんだから」が口癖のようで、てきぱきと仕事をすすめていった。たしかに安い方がありがたいし、安いやつでも30年前の型よりはずっとかっこいい。でもシャワーのホルダーはちゃちで安っぽいプラスチックで、それは少しがっかりした。
「30代で家を建てたら60代には築30年。ちょうどあちこち傷んでくるから、今リフォームして後は安心して暮らすんです。こないだ引き受けた件も60代のご夫婦で、退職金をそれにあてて、850万で全面リフォーム」
850万。あたしの髪の毛が恐怖で逆立ったわけですよ。