(画=一ノ関圭)
詩人の伊藤比呂美さんによる『婦人公論』の連載「猫婆犬婆(ねこばばあ いぬばばあ)」。伊藤さんが熊本で犬2匹(クレイマー、チトー)、猫2匹(メイ、テイラー)と暮らす日常を綴ります。今回は「かわいい洗濯機」。 洗濯機の水漏れが起きたので、業者をよんだそうですが――(画=一ノ関圭)

年があけたら洗濯機から水が漏れた。

洗濯中に床が水浸しになり、べとべとに溶けかけた黄色い塊が床いちめんに散らばり、凄惨な光景になった。

一、二年前にもこういう状態になり、洗濯するたびに床がびしょびしょになった。洗濯機の蓋もよく閉まらなかったから、電器屋さんを呼んだら、洗濯機は壊れてない、排水口に接続しているホースがはずれていたのだと言われ、ホースを元通りにつないでもらった。電器屋さんは、洗濯機も古すぎるから、今度何か不調があったら買い替え時ですと言い残して帰っていった。

うちの洗濯機は15年かもう少し前に買ったドラム式で、昔のiMacに似た丸顔で、その丸顔のかわいさに魅せられて決めた。

お風呂場の隅の奥まったところに置いてあり、ホースや排水口はその裏にある。それで今回も洗濯機の後ろにもぐりこんで、点検すると、案の定ホースがはずれていることがわかった。プロに頼ろうと判断したときに、少し前に郵便受けに入っていた水まわりのマグネット広告を思い出した。捨てるのもめんどくさくてそのまま放ってあったのだった。

マグネット広告は二枚あり、一枚の業者は2,000円値引きする。もう一枚の業者は2,500円値引きするということで、当然ながら2,500円安くなる方に電話をしたのだが、それが間違いだったかもしれない。わからない。