次の日電器屋に見に行った。

ドラム式はだめだと水まわり屋さんにいわれたと言ったら、「そんなことはないですけどねえ」とあたしより十歳くらい若いのかなと思われるシニアの男の店員はけげんな顔をした。今使っている機種はと聞かれて、「メーカーはわからないけど、15年くらい前の物で、丸くて大きくてとてもかわいいのです」と答えた。「はあ、かわいいのですか」とさらにけげんな顔をした。

ともかくまだ動く。長年かわいがってきた洗濯機。壊れるまで使うことにした。それがいいでしょうと電器屋さんに言われた。

水まわり屋さんに関してはちょっと不信感がないでもない。よくあるじゃないですか。リフォーム業者に年寄りが、必要ない契約を結ばされるという話。

「現金じゃないと値引きできない」と言われ、「日曜日だから銀行が開いてない」と言うと、「今どきは年中無休で銀行でもコンビニでもお金が出せるんですよ、行ってきてくださいよ」と言われて、行ってみたらほんとにおろせた。そのときは、必死で何も考えてなかったが、全部終わってお金も払って水まわり屋さんも帰って、お風呂場の床もすっかり乾いて、ほっとしてから、ふと考えたら、あの時ああやってお金をおろしにATMに走るあたし(67歳)は、まるでオレオレ詐欺の被害者そのものの姿だなと。

それを枝元ねこちゃんに言ったら、「だいじょうぶだいじょうぶ、悪いから呼んで、来てもらって直してもらったんだから、いいんだよ」と言われた。それでずいぶん気が楽になった。

一人で悩んで一人で決めてたからストレスフルだった。言えてよかった、親友ねこちゃん。この太っ腹で前向きで、ストレス低めで生きてるところが好きなんだ。


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米国人の夫の看取り、20余年住んだカリフォルニアから熊本に拠点を移したあたしの新たな生活が始まった。

週1回上京し大学で教える日々は多忙を極め、愛用するのはコンビニとサイゼリヤ。自宅には愛犬と植物の鉢植え多数。そこへ猫二匹までもが加わって……。襲い来るのは台風にコロナ。老いゆく体は悲鳴をあげる。一人の暮らしの自由と寂寥、60代もいよいよ半ばの体感を、小気味よく直截に書き記す、これぞ女たちのための〈言葉の道しるべ〉。