編集部の電話が鳴りっぱなしになった

中山 『ドラゴンクエスト』の舞台裏にも鳥嶋さんがいたというのは衝撃的な話です。私も小学生時代、まさにここからゲームの世界に入っていってました。PCの特集をするなかで「ファミコン」の可能性はどう感じていたのですか?

鳥嶋さん「編集部もパンクしてしまって、中の人間だけだとよくわからないっていうので、堀井さんたちにギャラを払って電話応対してもらってましたね」(写真:『エンタの巨匠』より)

鳥嶋 絶対に来ると思ってましたね。任天堂のファミコンは圧倒的に出来が良かった、特にコントローラーが。それまでの家庭用ゲーム機はジョイスティック型が多かったんですが、キャラクターがぴたっと止まらないんですよ。アクションゲームだと致命的ですよね。ファミコンだと十字キーとABボタンでぴたっとキャラが止まる。これはスゴイ、と。

中山 ファミコンの企画は読者アンケートで一時期3位になったみたいな話もありましたよね。

鳥嶋 『ファミコン神拳』ですね。「最近『コロコロ』がゲーム特集ですごく人気を伸ばしている」というので副編集長から話があって、立ち上げました。

そのときにも引き受ける条件を2つばかり突きつけました。「『コロコロ』の2色よりも豪華に4色刷にすること」「ゲームの裏コマンドを暴いていく中で多くのゲームメーカーからクレームがくるから、それを全部ブロックしてくれ」。

その条件の上で、僕と堀井さんと宮岡寛くん*11の3人で忖度なしにゲームの中身を評価するページを作っていきました。読者アンケートでは、1位がドラゴンボールで、3位にはファミコン神拳、となるような人気企画となります。

毎日、午後3時くらいになると、編集部の電話が鳴りっぱなしになった。学校が終わってすぐに読者が「コマンドが入らない」とクレームや質問を入れてくるからです。編集部もパンクしてしまって、中の人間だけだとよくわからないっていうので、堀井さんたちにギャラを払って電話応対してもらってましたね。

*11 宮岡寛(1958~):『メタルマックス』シリーズプロデューサー。早稲田大学時代からフリーライターをしながら『週刊少年サンデー』では土井孝幸と組んで「めざせ!マンガ家」特集、『トラゴンクエスト』ロト3部作の制作などに関わる。1988年にゲーム会社クレアテックを設立、2022年からはCygamesに移籍している。