「歌林の会」は、短歌賞を受賞する作家が輩出するという点では、歌壇屈指の結社だ。10代から90代まで、全国に約1000人の会員がいるという。
――年齢は私がいちばん上。だから威張っていられる(笑)。うちに手伝いに来てくれる歌友たちとは、お茶、お食事などの時、いろいろな話をするようにしています。「歌を作ってきたので見てください」と言う人には指導しますし、親の介護話に付き合うこともある。
どれも参考になるし、時には歌材にもなるから、「うん、うん」と聞いています。私にとっては大切な時間なので、忙しくても欠かしません。
昼食は冬はうどん、夏はそうめん。当番の歌友が買ってきてくれたコロッケやシューマイなどのおかずとともに食べます。午後からは選歌をしたり、書き物をしたり。たまには散歩に出かけることもあるけれど、冬はうちにいることが多いですね。
不思議なことに、寒い季節は歌も出てこないの。ところが3月4月になって木々が芽吹きだすと、降りてくるかのように歌が出てくるのです。
夜はひとり、テレビのニュースを肴に、肉や野菜が主体の食事をとります。ワインが好きで晩酌もしますよ。この頃は、心に刺さるニュースばかりで嫌になりますね。
ところで最近は、「人を傷つけない」風潮が歌の世界にも流入してきて、批評がしにくいですね。歌の内容によっては、「この人死んじゃうかもしれない」という怖さがあるから、きつく批判はできない。「なるほど、なるほど」と共感して、自分で考えさせる方向に持っていきます。
昔は「これが歌だと思ってるのか!」とよく先輩に怒鳴られたものです。今の世の中は人間関係に信頼性が薄いから、怒れないのね。もう少し信頼が厚ければ徹底的に言えるけど、そこまで達していない。