牛の背中

見て分かりやすい力士は、横綱・稀勢の里(現二所ノ関親方)で、目じりが上がっている。
関脇・霧馬山の目はぱっちりしていて明るい印象。大関になれるだろうか?先場所12勝3敗で決定戦により逆転優勝、先々場所11勝4敗。今場所2桁勝って、大関昇進ラインの33勝となるかが見どころだ。

初日、霧馬山は前頭筆頭・翠富士に肩透かしで勝ったが、正面解説の舞の海さんも向正面解説の西岩親方(元関脇・若の里)も「自分の方にまっすぐに引いて危ない」と指摘していた。
まっすぐに引くと、自分の方に相手を呼び込み、自分が後ろに下がって土俵際になってしまう。
横にいなすなら自分が下がらなくて良いのだ。

大関取りを意識すると緊張もあり心配だと思った。
しかし、私は場所前に相撲雑誌を必ず読むのだが、夏場所展望号の『相撲』(ベースボール・マガジン社発行)の霧馬山のインタビューを思い出し、心配が消えた。子供の頃の思い出を引用させてもらうと「自分は子牛や牛も勝手に捕まえてその背中に乗ったりして、祖父母によく叱られました」とあった。これによって体幹が鍛えられたかもしれないそうだ。

毎年購入している『大相撲力士名鑑』(ベースボール・マガジン社発行)。表紙を飾る横綱と大関が、令和3年5人、令和4年3人、令和5年2人になって寂しい。令和6年の表紙はどうなるのだろうか?(写真提供◎しろぼしさん)

皆さん、牛の背中に乗りたいと思いますか?
私は子供の頃、中野区のはずれに住んでいて、近所に牧場があった。友達と牛をのんびりと眺めていたが、誰も牛の背中に乗ることなど考えなかった。相撲部屋の親方がスカウトに来ないかと思うほど、体格の良い男の子がいたが、牛に乗りたいとは言わなかった。私もその男の子も、乗るとしたら隣の練馬区にある今はなき遊園地の豊島園の回転木馬だった。そして、笑顔の両親に回転木馬から手を振っていた。

霧馬山の対戦相手は、このことを知らないほうがよい。対戦相手が回転木馬派だったら、「この人、牛に乗れるのだ」と考え、気持ちで負けてしまう。ましてや霧馬山は4月24日生まれで牡牛座だぞ(これは関係ないか)。本来なら力士なので「霧馬山関」と言うが、大尊敬から「様」をつけたい。霧馬山様、どうぞその体幹を活かして、大関でも横綱でも好きなようになってください。