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帰れない二人

監督・脚本/ジャ・ジャンクー
撮影/エリック・ゴーティエ 音楽/リン・チャン
出演:チャオ・タオ、リャオ・ファン、シュー・ジェン、キャスパー・リャン、
フォン・シャオガン、ディアオ・イーナン、チャン・イーバイ、ドン・ズージェン
上映時間/2時間15分 中国・フランス合作
■9月6日よりBunkamuraル・シネマほかにて全国順次公開

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◆裏切り、別れ。17年にわたる恋の行方は

日本でも大ヒットした『長江哀歌(エレジー)』(2006年)などで知られるジャ・ジャンクー監督。長編劇映画第9作『帰れない二人』は、長編デビューから20年が過ぎ、来年50歳を迎える名匠の、集大成的な作品。2001年から始まる17年の歳月、中国内陸部の都市を転々として生きる女性を、変調していく恋人との関係を主軸に描いた傑作だ。

01年、山西省の大同(ダートン)。さびれつつある炭鉱町の雀荘に入り浸るヤクザ者のビンと恋人チャオ。ある晩、2人は不良グループに襲撃される。チャオは、ビンが不法所持していた銃で威嚇射撃。彼女は、銃の本当の持ち主がビンであることを明かさず、彼をかばい、5年の禁固刑に処される。しかし、チャオが出所しても、ビンからは音沙汰がない。チャオは、彼に会うために長江を行く客船で奉節(フォンジェ)へ向かうが、そこにはさらなる試練が待ち受けている……。

主人公のチャオを演じるのは、公私ともに監督のパートナーである女優チャオ・タオ。この役について、監督は「『青の稲妻』(02年/長編第3作)のチャオと『長江哀歌』(長編第5作)のシェン・ホンに共通するものがある」とチャオ・タオに語ったという。どちらも彼女が演じた役だ。

 

『青の稲妻』のチャオは、ヤクザの愛人で、ダンサーだった。『長江哀歌』のシェン・ホンは、2年間音信不通の夫を捜すためダム建設の進む古都・奉節にやって来る。確かに今作のチャオ役はこの前2作に通じるものがあるが、作品全体としては、ジャ監督の長編第2作『プラットホーム』(00年)を強く想起させる。山西省の小さな町の文化劇団に所属する若者4人の1979年から91年までを描いた作品で、チャオ・タオの初出演作でもある。中国各地を巡業する彼らを通して、急激に変化する社会の姿が映し出されていた。今作でも、チャオの旅路を通して、社会の変化が随所に描かれる。また、時の流れの無常観を鮮やかに描き出した点でも、両作は共通している。

ニヒルなヤクザ者として登場しながら、男の弱さを見せつけるビン役に、『薄氷の殺人』(14年)でベルリン国際映画祭最優秀男優賞を中国人俳優で初めて受賞したリャオ・ファン。やるせなさのなかに男の色気が香り立つ。

つねに毅然と振る舞い、人を騙してでも、一人生き抜いていくチャオ。そして時は流れ、17年の大同。彼女は変わり果てた姿のビンと十数年ぶりに再会する。チャオが彼を受け入れるのは、愛か、同情か、ある種の責任感だろうか。だが、翌年の元日を迎えると、再び彼らは離れ離れになる。

すれ違っても、裏切られても、何が起きても泣き言を言わず、前を向き続ける。そんな彼女の骨太な強さが、実に眩しい。

 

 

ガーンジー島の読書会の秘密

監督:マイク・ニューウェル
©2018 STUDIOCANAL SAS

 

1946年、イギリス。作家のジュリエットはイギリス海峡に浮かぶ小島に渡る。第二次大戦中、ドイツ軍に占領されていたこの島の読書会を取材するためだ。島民たちの素朴さと彼らが抱える秘密に魅了され、彼女の人生は大きく変化する。ウェルメイドなイギリス映画の真骨頂。8月30日よりTOHOシネマズシャンテほかにて全国順次公開

 

ヒンディー・ミディアム

出演:イルファーン・カーン、サバー・カマルほか
 

デリーの下町で洋品店を営む夫婦が、英語で授業を行う私立校に娘を入れるべく、なりふり構わず奮闘する。ついには低所得者層のための優先入学枠に目をつけ、スラム街に引っ越すのだが……。過熱するお受験戦争を題材にインド社会の現在を活写した傑作ヒューマン・コメディー。9月6日より新宿ピカデリーほかにて全国順次公開