キーワードは「付加価値」

由井 古本だと書き込みがあったりしますよね。一般的な古書店で買った本に知らない人のメモ書きがあれば、がっかりするかもしれません。でも、メモ書きが著者本人のものだったらどうか。それはむしろ付加価値になります。そして、この店でその価値はより輝く。(本を一冊棚から取り出して)たとえば、この作家である棚主さんは「値付けを考えるのが面倒だから」と、置いた本を全て定価の半額で販売しています。しかも、書き込みがある自著まで。

清水 僕だったら倍の値段を付けるね。(笑)

由井 僕が棚主さんによく言っているのは、書き込みや付箋など、ひと手間を積極的に本へ加えてください、ということ。とにかく「付加価値をどうやって生み出すか」という部分を徹底的に考えてもらっています。

ラテンアメリカ文学者・旦敬介さんの棚。手書きのメモが本に閉じこまれています(写真:本社写真部)

清水 そうした背景を知ると、お宝感がさらに増しますよね。僕は誰かに本を勧める機会が多いんですが、少なからず「絶版本」がその候補に挙がります。たとえば7000円ほどでアマゾンで売られているような本を紹介したりもするんですが…推薦前に仕入れておいてこのお店で高く売る。そんなこともできそうですね。でもまあ、それじゃせどりか。

由井 もしくは「これはどうしても売りたくない本だけど人に見せたい。だから値付けを数万円にした上で展示する」といった方もいます。ちなみに「蔵書表」という機能もこの書店では用意していて。前にこの本を所有していたのは誰か、という歴史が分かるようにしたシールを発行できるようにして、一冊一冊に付けています。

清水 誰かが一度持っていたことが価値になる。アートディーラーのような話になってきましたね。