(提供:photoAC)
芸能人の志村けんさんが新型コロナに感染した際「原因となったのは北新地のクラブのママ」という<デマ>が流れ、誹謗中傷の言葉がSNSで飛び交った。しかし実際には、本人は志村さんに会ったことすらなかったという。そして2023年5月18日の報道で、デマの投稿をした男女26人を大阪地裁に提訴し、名誉棄損で合計約3300万の損害賠償を請求したことがわかった。そのような偽情報は誰が作り、目的は何なのか? 2021年当時の読売新聞取材班が辿り着いた答えとは――。

志村けんさんの訃報。ファンの怒りは2人のクラブママに向けられた

2020年3月25日、国民的人気コメディアンの入院がニュースで報じられ、容体を案じる声が広がった。 

その翌日のことだ。SNS空間に火が放たれた。

〈志村けんが新型コロナに感染〉
〈感染報道の直前に来店〉

志村けんさんがコロナに感染し、その前に訪れていた店として東京・銀座のクラブを名指しした文章がツイッターに投稿されたのだ。

そこには、志村さんが誕生日ケーキを前に複数の女性に囲まれている写真が添付されていた。さらに投稿では、大阪・北新地のクラブの名前を挙げ、「感染者で営業停止との噂は?」とも記されていた。

数日後、志村さんの死亡が報じられると、こんな話がSNS上で瞬く間に拡散していった。曰く、志村さんの誕生日パーティーが銀座のクラブで開かれ、参加した北新地のママが志村さんに感染させた――。

これを信じたファンらの怒りは、一気に2人のクラブママに向けられた。

〈人殺し〉
〈お前を許さない〉
〈一生背負っていけ〉

特に「感染源」と名指しされた北新地のママのSNSには、1日数百件もの非難のメッセージが押し寄せた。

〈志村けんにうつした女を特定〉

そんなタイトルでママの顔写真を載せた動画もネット上で出回り、100万回以上再生された。