「女優だけを守る仕事」 ではない
具体的な仕事の進め方を、簡単にお話ししましょう。作品に参加することが決まったら、まず脚本を読んで「インティマシー・シーン」を抽出していきます。
直接的な性描写だけでなく、抱きしめ合うなど接触のあるシーン、それから水着以上の肌の露出はヌードになるので、シャワーを浴びるシーンなども拾い上げる。脚本のト書きだけではわからない細かい演出について、監督に確認していくためです。
例えば「キスをして激しく抱き合う」とか「裸で横たわる」などと脚本に書かれていたとします。「キスをして激しく抱き合う」とき、キスと手を回すのはどちらが先か、お互いに手はどこに置くのか、キスは舌まで入れるのか。
「裸で横たわる」とき、シーツはかかった状態なのか、仰向けなのか腹這いなのか、肌の露出はどの程度なのか……。
細かく確認したら、俳優に演出内容を伝えます。バストやアンダーヘアの露出など受け入れられない内容があれば、できる限り細かく要望を聞き、どこを解消したら演技可能かといったことまで詰めて、また制作側に戻すのです。
インティマシー・コーディネーターは「女優を守る仕事」と誤解されることがありますが、ジェンダーやセクシャリティのあり方が多様化しているいま、どの性別の俳優に対しても同様に対応します。