男性がシャワーを浴びるシーンはもちろん、上半身裸であっても同意を得る。「生々しく撮られたくない」なら、生々しい撮り方とはどういうものか、どれくらいまでカメラを寄せていいか、撮影時間はどれくらいか、お尻や上半身をどこまで見せていいかなど、具体的に希望を聞くわけです。
こうしたシーンは、細かい演出がないと「普段のようにやってみせて」と、自分のプライベートをさらけ出させられるような思いを俳優がすることになる。それは避けなければならない、と思います。お芝居である以上、アクション・シーンと同様に明確な演出があってしかるべきではないでしょうか。
インティマシー・コーディネーターがどのような仕事をするのか、日本にまったく浸透していない状況でのスタートだったので、最初は私も手探りでした。性的な描写があるシーンすべてに「NO」と指摘をされるのではないか、と不安を持った監督もいたかもしれません。
でも、私たちの仕事はあくまで制作側と俳優との橋渡し。俳優の味方をすることでも、作品の内容に意見を言うことでもありません。どんなに激しいラブシーンがあっても、それがプロデューサーと監督の望む描写で、演じる俳優が納得し、同意をしてさえいればいいのです。
俳優が心身ともに安心・安全な状態で、100%集中して演技に向き合えてこそいい作品作りができる――。そう信じてお手伝いをしていますが、なんであれ、前例がない仕事の第一歩は大変な思いをするものなのでしょう。仕事の役割がなかなか理解されず、私がバランスを崩しかけたつらい時期もありました。