ことばの音が身体に接地する第一歩

どっちが「モマ」? どっちが「キピ」?(『言語の本質』より)

上記の2つの図形のうち、どちらが「キピ」で、どちらが「モマ」だろうか? 

ほぼ全員が、丸い方が「モマ」で、尖っている方が「キピ」であると直感的に感じる。この直感は日本語話者だけではなく、世界中の異なる言語話者の間で共有されているようである。この直感的な音と形のマッチングを、11か月の赤ちゃんも感じることができるのだろうか?

このことを調べるため、赤ちゃんにことば(音)と対象の組み合わせを次々と提示していった。そのうちの半分は「合っている」組み合わせ(丸い形に「モマ」、尖った形に「キピ」)で、残りの半分は「合っていない」組み合わせ(丸い形に「キピ」、尖った形に「モマ」)である。合っているペアと合っていないペアは規則性を持たないようにランダムな順序で提示した。

筆者らはこのように予測した。音と形が合っているか合っていないかを赤ちゃんが認識できるならば、二つのケースで違う脳の反応が見られるはずだ。

実際、この仮説は正しかった。しかもそれだけではなく、なんと、「合っていない」組み合わせを提示したときに、大人が「イヌ」という音を聴いてネコの絵を見たときと同じ反応、つまりN400の脳波の反応が見られたのである。