姉妹のように仲が良いという、渡辺えりさん(左)と波乃久里子さん(右)(撮影:宮崎貢司)
父は歌舞伎の人間国宝、自身は劇団新派を牽引する俳優として半世紀以上、舞台に立ち続けてきた波乃久里子さん。一方、渡辺えりさんは20代前半から自身の劇団を率い、作・演出・出演の三役をこなしながらテレビや映画へと活躍の場を広げてきた。新派と小劇場、異なる背景を持つ二人を結び付けたのは――。発売中の『婦人公論』2023年6月号から、特別に記事を先行公開いたします。(構成=篠藤ゆり 撮影=宮崎貢司)

<前編よりつづく

高齢社会を予見した名作喜劇で共演

渡辺 この歳になると、先のことをいろいろ考えますよね。有吉佐和子先生原作の『三婆(さんばば)』は、まさに老後がテーマ。昔、水谷八重子さんと久里子さん、沢田雅美さんの『三婆』を観て、いつかやりたいと思っていたんです。

だから今回この作品で、新派に呼んでもらって共演できるのがすごく楽しみ。台詞がとっても面白くて笑えるし、社会風刺もきいている。ラストが東京オリンピックのころでしょう。今の日本を予見しているみたいな作品ですよね。

波乃 有吉先生の作品は、何年たっても古くならないところがすごい!

渡辺 一代で会社を大きくした男・浩蔵が死んで借金が残り、本妻が土地を売って……。残った1軒の家で、三人のおばあさんが一緒に暮らすハメになるんです。

波乃 私は本妻の松子、そして良重ねえちゃまが愛人の駒代役を演じます。