従来の慣習が
成立しないから
私はだいぶ前から、「ファミレス時代」がやってくると警鐘を鳴らしてきました。ファミレスとはファミリーレス、つまり、「家族および親類縁者が少ない」ことを意味します。少子高齢化が進み、2021年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの数)は1.30。しかも令和4年版の「男女共同参画白書」によると、50歳時点で女性の約6人に1人、男性の約4人に1人は結婚経験がありません。まさに大シングル時代の到来です。
かくいう私も、3人きょうだいの末っ子に生まれたものの、姉も兄も早世し、実質的には一人っ子。甥も姪もおりません。そして娘はきょうだいがおらず、子どももいないシングルです。私があの世に行ったら、娘は親類縁者がほとんどいなくなります。いわばファミレス時代の申し子といってもいいでしょう。
ファミレス時代において、自分の死の始末をどうつけるのか、そしてお墓をどうすべきかは大きな問題です。しかし実際には、方針を決めないまま亡くなる方も多いでしょう。そうした場合、行政はどのようなサポートができるのか、またすべきなのか。切実な問題だし、早急に検討すべき課題でもあると思います。また、生前に準備していても、安心はできません。なかには納骨堂や霊園と永代供養の契約を交わしたのに、倒産してトラブルになるケースもあります。
親や祖父母が入っているお墓を、いつどのように墓じまいすべきか、頭を悩ませている人も多いのではないでしょうか。このように、お墓問題はなかなか一筋縄ではいきませんが、「墓を守る」「お墓の管理は子孫にお任せ」といった従来の慣習が成立しない時代を迎えたのは確かです。
人生100年時代、生きるのも大変ですが、いかに死ぬかも大問題――いやはや大変な時代になったものです。ファミレス時代の「死」やお墓のあり方については、これから多くの知恵を集め、解決策を探る必要がありそうです。