減少に転じた都心のカラス

ところが、2000年をピークにカラスの羽数が減少に転じた。その後の激減ぶりにも驚かされる。2000年から2005年のわずか5年で42%減。第7回調査(2015年)では第1回調査の6737羽を下回る4816羽にまで減少し、2020年の第8回調査でどこまで減少するのか、注目された。

ところがコロナ禍のために調査は1年延期となり、2021年12月の実施となった。結果は驚くべきものであった。なんと3ヵ所のねぐらの合計が2785羽である。第7回調査のほぼ半分にまで激減したのである。

2000年ころ、東京には溢れんばかりのカラスがいた。住宅地にもオフィス街や公園にも、いたるところにカラスがたむろし、上空を飛び回り、鳴き声が聞こえた。ところが最近、都内に暮らす知人に尋ねると「そう言えばカラスが少なくなったねぇ」と言う。

カラスはなぜ減少したのだろうか。最大の原因は生ゴミの減少である。行政と住民が協力してゴミの減量に取り組み、分別収集や資源化(リサイクル)も進んだ。カラスの世界でも食べ放題の生ゴミバブルが崩壊したのである。

都会のカラス問題の本質は、カラスが悪いのではなく、人の廃棄した生ゴミが原因であることは明白である。東京23区のゴミ量の推移(「23区のごみ量推移(明治34年度~令和3年度)」東京二十三区清掃一部事務組合HP)とカラスの羽数変化のグラフを重ねると、両者の関係がはっきりと読み取れる。

ゴミ量は高度成長を経て、さらにバブル経済によって1989年に最大(486万トン)に達した。カラスの羽数は、ゴミの増加から約10年のタイムラグを経て2000年に最大値に達している。

東京23区のゴミ量推移とカラスの個体数変化(唐沢他,2021)

2005年以降は、ゴミの量はほぼ横ばいであるが、カラスの羽数はさらに激減している。カラス対策が徹底してきたためであろう。ゴミを覆うカラスネットの普及、ゴミステーションの管理、生ゴミの深夜回収など、様々な取り組みがなされてきた。東京都によるカラス捕獲作戦もカラスを減らす取り組みの一つであった。

カラス対策を施したゴミステーション(千葉県市川市)(写真・唐沢孝一)