自然教育園の壊滅的な減少
都心3ヵ所のいずれの集団ねぐらも、1985~2000年に急増し、2000年以降は軒並み減少している。しかし、2021年12月実施の第8回調査結果では、減少ぶりがあまりにも極端すぎる。
明治神宮はピーク時の9028羽から1580羽(82%減)、豊島ケ岡墓地も4467羽から1180羽(74%減)。自然教育園は5163羽からなんとわずかに25羽(99.5%減)にまで減少した。もはや集団ねぐらが維持されているのかどうかも疑わしいほどだ。
自然教育園でこれほどまでに減少した理由は何だろうか。考えられる原因は二つ。一つは、2019年からの新型コロナによる影響である。コロナ禍のための外出や外食の自粛、パーティーやイベント、冠婚葬祭の中止や自粛である。都心のカラスが主な餌場としていた繁華街での生ゴミが激減したのである。
カラスの衝撃的な激減はコロナ禍との関連もあり、第8回調査の結果はマスコミでも大きく取り上げられた。東京新聞では朝刊一面トップ記事として掲載(2022年1月26日)、産経新聞(2月27日)やJapan Times(4月9日)、朝日新聞(4月12日)、読売新聞(5月9日)と続いた。
カラスの急増期にはゴミを散らかす社会問題としてマスコミに登場し、カラスが減少し被害や苦情が減少した今回は、コロナ禍に伴う飲食店の休業やテイクアウトの増加といった都会人の生活スタイルの変化やゴミの減量などと関連して大きな反響があった。都会のカラス問題は、実は人間社会の問題であることは明白である。