(イラスト:さかがわ成美)

「同一労働同一賃金」の抜け穴も

たしかに、「同じように働いているなら賃金も同じ」というのは正しいですが、実は、この法律には抜け穴もあります。「同一労働同一賃金」の対象には、「無期雇用労働者」と呼ばれる、期限を決めずに長く働く非正規社員は含まれていません。

パートの場合、3年契約などと期限がある有期雇用より、いつまでも働ける無期雇用のほうが安定しています。ですから、同じ職場で5年超働いて資格を得て、有期雇用から無期雇用に転換したいと望む人も多くいるのです。こうした人たちが「同一労働同一賃金」の対象から外れてしまうと、なかなかパートの待遇改善も進まないことになります。

その点、今回のイオンリテールの制度は、無期・有期にかかわらず対象となるという点で、業界に一石を投じることになりそうです。

法律はできたけれど、実際には今までなかなか進まなかった「同一労働同一賃金」の制度。ここにきて「人手不足」という思わぬ追い風が吹き、今後は優秀な人材を確保するために、制度を取り入れる企業が増えてくることでしょう。働く意欲のある人なら、その努力に見合う待遇を用意するという考え方が、もっと一般的になってほしいものです。