ADHDの診断基準をみんなに当てはめると

しかし、これとは一見、矛盾するかのような報告が出てきました。

ある都市や地域で一定の期間に生まれた子どもを大人になるまで追跡し、ADHD診断や症状の有無を調べるという息の長い貴重な研究データです。

『「心の病」の脳科学 なぜ生じるのか、どうすれば治るのか』(著:林(高木)朗子・加藤忠史/講談社ブルーバックス)

その結果分かったことは、ADHDの診断基準を当てはめるとADHDと診断しうる子どものうち、大人になった時点でADHDと診断しうる人は6人に1人にすぎませんでした。

一方、大人になってからADHDの症状に当てはまる人が多くいるのですが、そのうち子どものときからADHD症状のある人、すなわちADHDと診断しうる人はごくわずかである、というのです。

同じような結果が、ブラジル、ニュージーランド、イギリスから同時期に公表されました。

これは混乱する話です。「ADHDの多くは生涯にわたる神経発達症だ」という前提が覆ってしまうのです。