スズメならパン屑を寄付することもできるが(猫たちが熱心に見るので、庭に毎日まいている)、ツバメは虫を食べる。「いえ、もうおパンというものは」などと言って食べてくれるといいんだがと思いつつ、相手は野生動物だからなすすべもなく、刻々と時が経ち、夜半、犬をおしっこさせに外に出たら、ひなたちは、全員大きいお尻を外につき出して眠っていた。

あの格好で寝るから、巣の中は清潔、巣の下はフンだらけ、本能というよりマナーとかしつけとか考えたくなるツバメの知恵だ。

親は帰ったか、晩ご飯は食べたかと考えつつ、やはりなすすべもなく、家に戻り、刻々と時は経ち、朝になり(7月1日)、外に出て見たら一羽もいなくなっていた。

おとなと同じくらいに大きくなったツバメ3姉妹。無謀な性格の上の娘が「お母さんたち帰ってこないから、外に出てみようよ」と言い出し、慎重すぎて臆病な中の娘が「あたしたち飛び方もまだ知らないじゃないの、猫やカラスが来たらどうするのよ」と反論し、末の妹は、どうせなら夢を持って生きたいと言い……。ついに中の子は、かなり無謀な上の子とやや無謀な下の子に説得され、みんなで初飛行を敢行したものと見える。

ところが、午後になったら、ツバメが3羽、巣に戻ってきたのである。尾羽が短かったから子ツバメだと思う。すーいと上手に飛びながら巣に戻り、誰もいないのを確認して、すーいと外を一周してきてまた巣に戻る。3羽で交互に巣に近づいたり離れたりしながら、「出ていったけど、やっぱり心細くなってきたし、おなかもへってきたから、戻ってきたのに、どうしたんだろう、誰もいない」と言ってるようだ。

そのいかにも「お母さんもお父さんもいないなあ、どうしたのかなあ」という飛び方に、おば(あ)さんは思わず涙ぐんだが、やはりなすすべがなかったのである。

その夕暮れ、雨が一寸止んだので散歩に行った。葦原にはツバメはまだ来てない。あの3羽は誰からも、ここに来ればみんなで眠れるよなんて教わってないかもしれない。そもそもここに来て眠るようになるまで、生き延びられるんだろうか。

ねぐらに帰るムクドリたち、雨ですっかり増水した濁流