自前のライブで場数を踏んで

清水 焦ったらどうするの? そこまでだって頑張ってきてるわけだから、もっと頑張るのは難しいよね。

小宮 極力、ライブに出るようにしました。でも、よしもとの芸人さんみたいに自前の舞台があるわけではないし、主催者側から呼んでもらえるほど売れてもいないので、ほかの事務所のまだ売れてない人たちと3000円くらいずつ出し合って、小さな小屋を借りて。そんなライブを、月に25回はやっていました。

相田 先輩のナイツさんが、寄席でとにかく場数を踏んだ、と言っていたので、それを僕らもやらないと、と思ったわけです。

清水 ナイツは先輩の鑑だね。

小宮 でも、借りられるところはどこもちっちゃいし、環境は劣悪だし。一番驚いたのは、阿佐ヶ谷のとある小屋。2階に大家のおじいちゃんが犬と暮らしてるアパートなんですよ。

相田 1階が舞台で、階段を上がると2階が二股にわかれてて、左行ったら楽屋なんですけど、右行ったらおじいちゃんち。

清水 あははは。生活感がハンパじゃない。

小宮 僕らがわーっとネタをやってたら、階段をトコトコおじいちゃんが下りてきて、「うちの犬が起きちゃうから、ちょっと静かにしてもらえる?」って。

相田 ほかは、区民ホールだとか視聴覚室だとかも借りました。

小宮 舞台照明が蛍光灯なんで、舞台に上がってからゆるゆるついたり、ずっと蛍光灯がジジジジいってたり。だから、自前の劇場があるってやっぱりすごいことです。

清水 よくやる気が途切れなかったね。

小宮 一番大きかったのは、一緒に頑張っている芸人仲間がいたことですね。だんだん、彼らをどう笑わせてやろうか、という感じになっていって。おかげでネタが過激になりすぎて、テレビではできないお笑いになってましたけど。

〈後編につづく


清水ミチコさんの好評連載「三人寄れば無礼講」書籍化!

2人×18回、“今、会いたい人”を招いて繰り広げられる、ざっくばらんで愉快な鼎談。

・第1回:南伸坊 / YOU
・第2回:三谷幸喜 / 大竹しのぶ
・第3回:林のり子 / 吉本ばなな
・第4回:養老孟司 / 甲野善紀
・第5回:野沢直子 / 藤井隆
・第6回:蛭子能収 / 五月女ケイ子
・第7回:井上陽水 / 山下洋輔

など