撮影:木村直軌
テレビ出演が増えたいまも、ライブでの漫才を大切にし続けている三四郎の相田周二さんと小宮浩信さん。その独特なかけあいはラジオ番組のフリートークでもおなじみで、熱烈なファンに支持されています。ふたりの番組を興味深く聴いていた、という清水ミチコさん。
後編では、伝説のテレビ出演の隠れたエピソードも飛び出して――(撮影=木村直軌 構成=南山武志)

〈前編はこちら

半泣きで電話したら、相田も泣いて

清水 チャンスが巡ってきたのは、いつだったの?

小宮 『ゴッドタン』というお笑い番組に出演が決まったときです。

相田 「芸人が選ぶ面白芸人」みたいな企画で1位になって。

小宮 ところが収録の2日前、事件が起こるわけです。終電に乗り遅れそうになった僕が、雨の中、転んで前歯と膝を折って。包帯ぐるぐる巻きの車椅子状態ですから、テレビ出演なんてとても無理になっちゃった。相田に半泣きで電話したら、相田も泣いて。

相田 「出ろよ。ふざけんなよ。ゴッドタンだぞ」って。

清水 その一言で無理して出たの?

小宮 いえ、番組のプロデューサーに状況を説明したら、「逆に面白そうだ」って言われて出ることにしたんですけど、当日、実際に会ったら想像以上にボロボロで、「うわっ」って引いてました(笑)。風呂にも入れないので、髪も脂でべっとべとなんですよ。それを「初めてのテレビだから、調子に乗ってワックスつけすぎ?」っていじってもらえたので、そのノリで突っ走りました。

清水 舞台は車椅子で?

相田 そうです。「ど~も~」って、僕が車椅子押して出ていくわけです。前代未聞の漫才でしょ。センターマイクは僕の胸あたりに合わせてるから、小宮はこう斜め上を向いてしゃべるしかない。で、普通に立ってるやつがボケて、歯が欠けてて包帯ぐるぐるのほうが「いや、じゃねーだろ」ってツッコむ(笑)。ツッコむときにどうしても車椅子がクルって回っちゃうから、僕がその度にスッと正面に向け直して、またネタを続ける。

清水 あははは。もうダメ……。すごい伝説作ったね。気の毒だけど、想像するだけですごくおかしい。でも、何かを狙ったんじゃなくて、自然にそうなったわけだもんね。

小宮 現場はちょっと混乱してました。劇団ひとりさんとおぎやはぎさんは、「もしかして、そういう芸風?」「それにしては、歯の欠け方がリアルだね」って。(笑)

相田 「ネタの中身が頭に入ってこねーよ。とりあえず経緯を説明して」ってなるじゃないですか。

清水 でも、劇団ひとりやおぎやはぎみたいに、わかってくれそうな人たちに見てもらえた運がすごい。まさに怪我の功名。