「今は離れていてもちゃんと家族とコミュニケーションがとれるので、本当にありがたいです」(撮影◎林喜代種)
世界有数のオーケストラ、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団でコンサートマスターを務める樫本大進さん。この夏から秋にかけての活動は、日本での公演が目白押し。7月の読売日本交響楽団との共演、ベルリン・フィル八重奏団の演奏会。そして自ら主宰する「ル・ポン国際音楽祭(兵庫県赤穂市・姫路市で開催)」は、今年16年目を迎えようとしています。来日した樫本さんに、充実した活動内容についてお話を伺いました。(構成◎林田直樹 写真撮影◎林喜代種 写真提供◎ジャパン・アーツ)

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僕が住んでいるベルリンの街は、コロナ以降まだ完全ではないですけれど、賑わいを取り戻しつつあります。幸いベルリン・フィルの公演にはお客さんが戻ってきてくれています。他のオーケストラはもうちょっと厳しいみたいですけれど。コロナ禍で演奏会がキャンセルになっていた頃は家族と過ごす時間が増えて、そういう意味ではよかったけれど、また忙しくなっちゃいました。

今回の滞在はちょうど子どもの夏休みにあたるので家族みんなで帰ってくるんですけど、コンサートの時期は妻も子どもも実家に帰っているので、東京滞在中は一人です。今はテレビ電話があるし、本当に便利な時代に生まれてきてよかったなと思いますね。

今のベルリン・フィルのツアー期間は、だいたい2週間ぐらい、マックス3週間くらいですが、昔の団員に聞くと、カラヤン(ヘルベルト・フォン・カラヤン。1955~89年にベルリン・フィルの終身指揮者・芸術監督)時代には1ヵ月半くらいアメリカを電車で回っていたそうです。

当時は普通の国際電話しかなかったから、大金を払っても1週間で一回、5分くらいしか家族と話せなかったと。それと比べると、今は離れていてもちゃんと家族とコミュニケーションがとれるので、本当にありがたいです。