コンサートマスターとして思う、最近のベルリン・フィル
ベルリン・フィルは、サイモン・ラトル(2002~18年に首席指揮者兼芸術監督)の時代に曲のレパートリーがすごく増えたと思います。ピーター・セラーズ(アメリカの舞台演出家)が合唱団やオーケストラまでも演出したバッハの「マタイ受難曲」「ヨハネ受難曲」は特別な演奏でしたし、フランスものからイタリア・オペラも、ヘンデルやハイドンも素晴らしかったですし、リゲティとかベリオも大変だったけれど良かったですし、ストラヴィンスキーの三大バレエ以降の曲も素晴らしかった。
ベルリン・フィルの王道のレパートリーであるベートーヴェンやブラームスやリヒャルト・シュトラウスだけではなくて、枠を半端なく広げてくれたと思います。
1日か2日のリハーサルで、バロック・アンサンブルの団体みたいにもなれるし、フランスものの曲をそれっぽく演奏できる。いい意味で化けることができるようになったし、得意になったなあと思います。
昔のカラヤンの時代のベルリン・フィルは、何といってもドイツ音楽の総本山。素晴らしかったですし、それだけでも十分なんですけど、やっぱりオーケストラは自分が今持ってないものを次の指揮者(芸術監督)に求めるんです。
クラウディオ(・アバド。1990~2002年に首席指揮者・芸術監督)が来てマーラーの世界が広がって、サイモンがレパートリーを増やしてくれて、いまペトレンコ(キリル・ペトレンコ。2019年からベルリン・フィル首席指揮者兼芸術監督)が来てくれて、ルーツに戻りながら、オーケストラの力を更に幅広くしてくれています。
ペトレンコは、音楽に全てを捧げる人です。自分の身を捧げるぐらいの勢いで音楽に向かっているので、一緒にステージに立っている身としては本当に申し訳ないぐらい。我々もついていくのが精いっぱいなくらいで、それぐらいすごいパワーですね。
ペトレンコは何があっても作曲家を、楽譜に書いてあるものを一番大事にする。「ベルリン・フィルはいつもこうやってきているんだよ」と我々が慣れているものを、遠慮なく壊していく。音楽のためだったら、どんな壁でも崩していく。
そこには崩す根拠があるんです。こちらも完全に「あ、そうか」と納得しちゃう。それで実際、良い結果になるんです。だからどんな曲をやっても面白いし、フレッシュですよ。
ヴァイオリニスト・樫本大進「ベルリン・フィル八重奏、気心知れた仲間たちと奏でるシューベルトの名曲」に続く
『読売日本交響楽団 第630回定期演奏会』
【公演チケット好評発売中】
2023 7.27〈木〉 19:00 サントリーホール
指揮=セバスティアン・ヴァイグレ(常任指揮者)
ヴァイオリン=樫本大進
モーツァルト:フリーメイソンのための葬送音楽 ハ短調 K. 477
細川俊夫:ヴァイオリン協奏曲「祈る人」(国際共同委嘱/日本初演)
モーツァルト:交響曲第31番 ニ長調 K. 297 「パリ」
シュレーカー:あるドラマへの前奏曲
『選ばれし8人 頂点のハーモニー ベルリン・フィル八重奏団』
日時:2023年11月27日(月) 19:00
開場 / 終演予定:18:20 / 21:00
会場:東京オペラシティ コンサートホール Tokyo Opera City Concert Hall
日時:2023年12月2日(土) 17:00
開場 / 終演予定:16:30 / 19:00
会場:ミューザ川崎シンフォニーホール Muza Kawasaki Symphony Hall
【出演】
ベルリン・フィル八重奏団 Philharmonic Octet Berlin
樫本大進 Daishin Kashimoto (第1ヴァイオリン, 1st Violin)
ロマーノ・トマシーニ Romano Tommasini (第2ヴァイオリン, 2nd Violin)
アミハイ・グロス Amihai Grosz (ヴィオラ, Viola)
クリストフ・イゲルブリンク Christoph Igelbrink (チェロ, Cello)
エスコ・ライネ Esko Laine (コントラバス, Contrabass)
ヴェンツェル・フックス Wenzel Fuchs (クラリネット, Clarinet)
シュテファン・ドール Stefan Dohr (ホルン, Horn)
シュテファン・シュヴァイゲルト Stefan Schweigert (ファゴット, Fagott)