「僕らこの八重奏団は100年前ぐらいにできた、ベルリン・フィルで最も古いアンサンブルなんです」(撮影◎林喜代種)
世界有数のオーケストラ、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団でコンサートマスターを務める樫本大進さん。夏から秋にかけての活動は、日本での公演が目白押し。7月は読売日本交響楽団と共演し、大反響で幕を閉じました。さらに11月にはベルリン・フィル八重奏団の演奏会があります。そして自ら主宰する「ル・ポン国際音楽祭(兵庫県赤穂市・姫路市で開催)」は、今年16年目を迎えようとしています。来日した樫本さんに、充実した活動内容についてお話を伺いました。(構成◎林田直樹 撮影◎林喜代種 写真提供◎ジャパン・アーツ)

ヴァイオリニスト・樫本大進「コロナ以降、賑わいが戻りつつある、ベルリン・フィル。コンサートマスターとして思う、最近の楽団とは」から続く

気心の知れた仲間たち、ベルリン・フィル八重奏団

今年の11月末から12月頭にかけて日本で演奏するベルリン・フィル八重奏団のプログラムは、たまたまですが、こちらも細川俊夫さんの曲、そしてシューベルトという組み合わせです。すごく合っている二曲だと思います。本当はこのオクテット(八重奏団)は、2020年5月にツアーする予定だったんですけれど、コロナ禍でキャンセルになってしまったので、今年になったんです。

やっと日本初演できる、細川さんの「テクスチュア」という曲は、その名の通り、8つのレイヤーが着物、織物のように美しく重なっていくんです。

生地が1枚あって、そこに2枚目の生地が乗ったときに色の違いが生まれて、デザインが変わっていく。さらにそれが3枚になって複雑になっていく。それがまたふわっと消えて2枚になっていく。横の流れと上から見た流れをすごく感じる。聴いていると、その波が面白い。

家に帰ってこの曲をシャワーを浴びながら歌うことはないでしょうけれど、その奥深い雰囲気は、特に日本人は分かりやすく、入り込めるし味わえると思います。

シューベルトのピアノ曲の「楽興の時」を、作曲家のハンズ・アブラハムゼンが編曲した八重奏編曲版も面白いですよ。これはホルンのシュテファン・ドールがアブラハムゼンのホルン協奏曲をやったときに、「これ(楽興の詩)、ちょっと自分の遊びで編曲したんだけど興味ある?」って楽譜を渡されたんですよ。それでやろうやろうとなって。シューベルトですし、そんなに変わった仕組みはなくて聴きやすいと思います。

メインの八重奏曲は、シューベルトの室内楽でも最高の名曲。この演奏会は結構お得だと思いますよ。ベルリン・フィルがほぼ聴けるから(笑)。僕らこの八重奏団は100年前ぐらいにできた、ベルリン・フィルで最も古いアンサンブルなんです。

シューベルトの八重奏曲を弾くために作られた団体ですから、僕らにとってこの曲は絶対的な存在で、この曲を弾くときはガッと集まる。同じオケのメンバーで仲がいいし、よく知っているし。曲としても、小さい室内楽のパートもあれば、シンフォニーの要素も楽しめると思います。