鈴木プロデューサーの手腕

大ヒットの技法3:この方法が鈴木手法「人の行く裏に道あり、花の山」

これは株式市場で使われる「利益を得るためには他人とは逆の行動をとらなくてはならない」という格言です。大衆はとかく群集心理で動きがちです。上から目線のようになってしまいますが、映画プロデューサーは群集心理だけに迎合していては大きな成功は得られません。むしろ「他人とは反対のことをやったほうが上手くいく」というのが鈴木プロデューサーの手法。

大勢の人が動く方向に進めば、確かに危険は少ない。事なかれ主義で逆らわず、というのが世渡りの平均像。でもそれはサラリーマンの考え方です。成功者とは誰もやらないことを黙々とやってきた人たちのこと。欧米では「リッチマンになりたければ孤独に耐えろ」と教えられます。いかにも酸いも甘いも噛み分けた鈴木プロデューサー的なやり方ですね。過去作品のキャンペーン事例を見るとわかりますが、従来の宮崎アニメは、画力(えぢから)のあるシーンをテレビなどに小出しにする方法をとってきました。それとは一線を画した今回の作戦は、鈴木プロデューサーが賭けに勝ったということでしょう。

そもそも「エンタメ映画」と「アート的遺作の映画」では売り方がちがいます。映画のプロデューサーとは、企画や役者を決めて、スタッフと制作費を集めて、公開する映画館の手配や宣伝まで行います。 映画プロデューサーの手腕こそが映画成功のカギを握っていると言っても良いです。

そして情報を発信しないほうが良い理由とそれを可能にする条件は以下の3つにまとめられます。

良い理由1:「わからない」に一点集中できる

良い理由2:宣伝しないから「期待と違う」など、文句のつけようがない

良い理由3:宣伝しないから金もかからず、結果的に利益が大きい

可能な条件1:宣伝しなくてもいい種がある(あの宮崎駿監督が引退を覆しても作りたかった作品)

可能な条件2:ブランド資産がある(作品からの感動による映画鑑賞への信用が厚い)

可能な条件3:(ジブリとして)自らSNSで情報発信をしている。またその情報を観た人や権威のある人が拡散してくれる土壌がある。