(撮影◎本社 奥西義和)
来る10月、NHKホールを皮切りに芸能生活55周年を記念してラストホールツアーをスタートする和田アキ子さん。なぜ今回、「ホールツアー」を最後とするのか、デビュー時の破天荒な思い出やご家族とのことを振り返りながら、語っていただきました。(構成◎岡宗真由子 撮影◎本社 奥西義和)

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声さえ出ていれば、80まで歌い続けたい

なぜ今回のホールツアーが“ラスト”ですかと聞かれれば、「満身創痍だから」としか言いようがないですね(笑)。まず左足は股関節を痛めてしまい、右足も膝を痛めています。右目も網膜色素上皮裂孔って言って、視界が欠けた状態なんです。

でも、記念すべき55周年のコンサートでしょ?満身創痍だけど、生半可なステージにはしたくないんです。去年はどうしても体力的に無理だろうって思いましたが、やっぱり55周年の間にやろう!って決意しました。お越しいただいた以上は、「元気をもらった」と感じてほしいですから、今はツアーに向けてボイトレとリハビリを頑張っています。

おっぱいが垂れて、お腹がぽっこり出て、お尻がぺたんこになっても、声が出る限りはステージに立ちたいと、10代の頃からずっと言ってきました。海外には、杖をついてステージに立っている歌手の方はいっぱいいらっしゃいます。だけど、杖をつかずにホールのステージに立ちたいと今のところは思っています。歌も、ホールでしか歌えない歌というのがいくつかあるんです。衣装も、ホールで「魅せる」ために、他のライブやテレビとは全く違うものをいつも着ていますからね。

昔、見るも勉強、聴くも勉強ということでクラシックコンサート行った時に、マイクを持ってないし、ピンマイクもつけてないなと気づいたんです。なのになんでこんなに声が届くんだろう、これはすごいことだって感動しました。クラシック歌手にできるなら私にもできるはずだって思って、『今あなたにうたいたい』を“オフマイク”にして歌うことにしたんです。

でも後から、足元に集音マイクがあったって知りました。なんだ、しんどいことしてるのは私だけなんだって驚きましたよ(笑)。それに、ソプラノのような高音のほうが大きな音は出しやすくて、低い音でホールの後ろの座席まで届かせるのは結構大変なんです。ホールで歌う曲には他の曲の5、6曲分のエネルギーを使ってしまう曲があるんですが、今回のツアーで歌えるものなら歌いたいですね。

私、ファンクラブはないんですが、いつも来てくれる昔からのファンがいるんですよ。いつも“あの子たち”と呼んでいるので、そう呼ばせてもらうと、あの子たちには前の座席には座ってほしくないんです。ツアーの前には私の曲をおさらいしてくれているそうで、私よりちゃんと曲の歌詞が頭に入ってるんです。だから、私が歌詞を間違えたりすると、焦った顔で「あ!」とか言うんですよ。そんなことされると、こっちがますます焦るじゃないですか。私、「緊張しい」なので、最初の1、2曲目とか特に間違えやすいからプレッシャーで…(笑)。私が55周年ということは、あの子たちも相当な年齢ですからね。わざわざ会場まで来てくれるのも大変なんですから、尚更良いもの見せたいって思うんです。

いつも来てくれる昔からのファンの子たち。その年齢を考えると会場まで来るのも大変なのだから尚更良いものを見せたい思うと語る和田さん(撮影◎本社 奥西義和)