【トラブルの種1】介護にかかるお金を多く負担している

親の介護が始まったとき、まずきょうだい間で話し合うべきなのが、「誰を『主介護者』にするか」ということです。主介護者とは、介護における窓口・責任者として動く人。ケアマネジャーや医療機関と連絡を取り合い、どのような介護・医療を受けるか決定する大切な役割です。

最近は少しずつ改善されていますが、病院や福祉側が、「この人は親の近くに住んでいるし、仕事もしていないようだから」と、一方的に主介護者を選ぶことがあります。するとほかのきょうだいも、「介護のことは任せるよ」と、何でも押しつけるような状態になりかねません。

その場合、特に問題になるのがお金の負担です。最初はちょっとした買い物を頼まれたり、時々電車で様子を見に行ったりするだけだったとしても、積み重なればそれなりの出費に。要介護度が上がると費用もかさみます。自分の生活のことも考えると、いつか限界が来てしまうのは目に見えている。

親の介護では親のお金を使うのが基本とはいえ、そもそも本人の貯えや年金が少ない場合もあるでしょう。また、親の通帳を預かってそこから使うとしても、親が亡くなった後、「必要以上に使い込んでいたのでは」と疑いをかけられ、相続トラブルに発展するケースも。

そうしたもめごとを避けるには、介護が始まったらなるべく早く、家族でテーブルを囲んで話し合いの場を持つことが重要です。誰が主介護者になるか、離れて暮らすきょうだいに担当できる役割は何か、連絡手段はどうするか――などを具体的に決めましょう。

介護にかかるお金は、どんなに少額でも「記録を残して、きょうだい間で共有する」ことが大切です。実家にノートを1冊用意して、その日かかった費用をすべて書き込んでください。

私が金銭管理の方法としておすすめしているのは、親名義で「介護用口座」を作ってもらうこと。そこへ介護に必要な分だけお金を移し、「ここから使ってね」と親が言ってくれるのがベストです。

施設利用料などの引き落としのほか、多くの銀行では家族が使える「代理人カード(家族カード)」を作れるので、必要に応じて発行してもらうとよいでしょう。この場合も、使途の記録はノートなどにしっかり残してください。

親の認知症が進んで判断能力が低下してくると、銀行口座からの引き出しに制限がかかり、不動産の売却を含めたさまざまな契約が結べなくなります。施設の入居費などを親の貯蓄でまかないたい場合には、「家族信託」や「任意後見制度」を利用するのも手です。どちらも親が元気なうちに契約する必要があるため、早めに検討しましょう。

もめないために、「家族信託」や「任意後見制度」を使うというのもお勧めです。

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