【stage】山田裕貴、奈緒、仲村トオルが出演。『オデュッセイア』をモチーフに

『終わりのない』撮影◎山添雄彦

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“始まりと“終わりを”探す旅

映画化されて話題となった『散歩する侵略者』や『太陽』でも知られる、劇団イキウメの劇作家・演出家の前川知大。普通の人々の日常生活にふと顔をのぞかせる異世界を通して、人間の奥底にひそむ“名状しがたい何か”をあぶり出す名手だ。それは一見、「オカルトもの」や「SFもの」とも言えそうで、その実はっきりと一線を画しているのが大きな魅力。“名状しがたい何か”は、時に人々が連綿と紡いできた太古の記憶であり、時に畏怖すべき存在への祈りであり……。東洋哲学を思わせる独特の視点は、西洋を手本として発展してきた日本演劇界で異彩を放つ。

そんな前川作品の魅力をたっぷりと味わえるのが、これまで数年おきに上演されてきた世田谷パブリックシアターとの共作シリーズだ。小泉八雲の作品集『怪談』の短編5編を、“語り物”の手法を取り入れて構成した『奇ッ怪～小泉八雲から聞いた話』や、岩手県遠野地方に伝わる逸話や伝承をまとめた柳田国男の説話がモチーフの『遠野物語・奇ッ怪其ノ参』など、上演のたびに大きな話題を呼んでいる。

待望の最新作『終わりのない』は、古代ギリシャの叙事詩『オデュッセイア』を原典とした物語。歴史と神話、人間と神々が地続きで描かれる世界観を下敷きに、「歴史はいつ始まり、物語はいつ終わるのか」という命題に挑む。

キャストに目を転じると、NHK連続テレビ小説『なつぞら』小畑雪次郎役で注目の山田裕貴と、ドラマ『あなたの番です』の尾野幹葉役で印象的な奈緒が、前川作品に初登場。劇団ナイロン100℃の演技巧者・村岡希美のほか、安井順平や浜田信也らイキウメ劇団員、さらに「奇ッ怪」シリーズには欠かせない仲村トオルが今回も出演し、目には見えない何かがそこに“ある”と信じられる空間を、緻密な演出とともに創り出す。

「『わたしたちは何故ここにいるのだろう？』『いつの間にこんなところまで来てしまったのだろう？』という個人の旅を人類の旅に重ね、望郷の念をもって描いていく」と本作への意気込みを語っている前川。目の前で広がる“異世界”を実際に観て、感じられるのが、舞台の醍醐味。得難い体験を、ぜひ劇場で。

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『舞台フラメンコ～私の地アンダルシア』

フラメンコ界を代表する“貴公子”ファン・デ・ファンと、2017年にフラメンコ国際コンクールにて、日本人男性として初の優勝を果たしたシロコ。まさにトップクラスのダンサーふたりの共演が見られる、貴重な機会だ。タイトルの「アンダルシア」はフラメンコ発祥の地であり、また7年前にファンとシロコが出会った場所でもある。その地が彼らに与えたインスピレーションを踊りと歌、演奏に乗せ、スペインと日本のアーティスト総勢14名で展開してゆく本作。なかでも強烈な存在感を放つファンと、艶めかしく情熱的なシロコの即興デュオは見どころだ。フラメンコならではの情念と哀愁があふれる舞台を堪能したい。

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2016年前回公演より／撮影◎池村隆司

そのスイートな劇団名とは裏腹に、綿密な下調べから書かれる骨太な脚本と、人間関係を丁寧にすくい取る演出で人気の劇団チョコレートケーキ。今回の『治天の君』は、第21回読売演劇大賞（2014年）の選考特別委員賞などを受賞、各界から一躍注目を集めた作品の再演だ。物語はいまだ語られることの少ない悲劇の帝王・大正天皇嘉仁にフォーカスを当て、彼の苦悩と喜びを浮き彫りにしてゆく。明治天皇の唯一の皇子でありながら、家庭的な愛情に恵まれなかった少年時代。あまりに寂しいその引退と死……。激動の明治と昭和に挟まれた「大正」という時代を、ひとりの男の姿を通して描き出す秀作。