AIがノーベル賞を受賞する日

科学研究においても、生成系AIはデータの解析や仮説の生成に役立つことが期待されています。

大量のデータから傾向やパターンを抽出して予測モデルを構築したり、重要なデータを抽出し、サマリーを作成することも可能です。科学研究者はより効率的に研究成果を得ることができるようになるでしょう。

清水さん「GPTは試験の問題と答えをほとんど丸暗記しているようなもの」(写真:本社写真部)

生成系AIを用いた医療画像解析は、病気の早期発見や正確な診断に役立つ可能性があります。

以前、救急医の先生に話を聞いたことがあります。

救急医は常に人手不足で、次々に運び込まれてくる事故や急病の患者をまずCT検査にかけ、体のどこに損傷があるのかを素早く見つけて医療的な判断をする必要があります。これを読影(どくえい)と呼ぶそうです。

読影の作業では、画像を見ながら患者の症状や病歴などの情報を考慮しつつ、疾患や異常の有無、その種類、程度、部位などを判断することが求められます。この作業は通常、医師や放射線技師が行います。

CT画像は多数の断層像から構成されていて、それらを連続的に見ながら判断する必要があります。また、異常部位以外にも、生理的な変化やアーティファクト(画像上の偽影)などが出現することがあるため、それらを冷静に正しく判別する能力も求められます。

実際の救急現場では、多忙すぎて30時間連勤ということも珍しくないそうです。そうなると、後半は疲れてきて読影の精度がどうしても落ちてしまうのだそう。

この救急医の先生はAIに関して全くの素人ながら、仲間の医師たちからデータを集め、見よう見まねでAIを研究し、実際に人間が判断するよりも速くて正確な読影ができるAIの開発に成功したそうです。

このように、直接的に人命を救うことにつながるAIが現場で活用され始めていますが、生成系AIが医学の世界に入るとさらに大きな成果が期待されます。

たとえば、生命科学分野における遺伝子データの解析。遺伝子データは人間のDNAに関する情報を含み、その解析は研究者にとって大きな課題です。生成系AIが膨大な量の遺伝子データを分析し、関連性のある情報を抽出することで、新しい遺伝子の機能や病気との関連性などを発見できる可能性があります。