「遺品整理に迷わないよう、普段から好きなものを伝えておく」(遺品整理士)
一番困る遺品は、遺骨や位牌。先祖の遺骨がいくつも放置されていたり、故人の家族も知らない水子の遺骨が出てきたりしたこともありましたね。
遺骨を埋葬する場合は法律で墓地に埋葬することが義務付けられており、位牌はお寺や仏壇店などで魂抜きをする必要があるもの。ですから、「捨てればOK」というわけにはいかないのです。
最近は、ペットの遺骨も増えています。寂しい気持ちからそばに置いていたのだと思いますが、家主の死後は〈処分に困るもの〉になってしまうことを知っておいてほしいですね。
遺品整理をしていて感じるのは、遺品に対する男女の考え方の違い。それが原因で、家族の諍いが起こることはよくあります。
たとえば、父の遺品整理中、母は寂しさからほとんどのものを「捨てたくない」と言うも、「いらないから捨てろ」と息子が反対し、娘が「取っておきなよ」と母の味方をするというのは、よくあるパターン。
遺品が故人にとってどんなものだったかがわからなくても、女性は〈取っておきたい〉傾向が強く、男性は〈捨ててしまおう〉と考えがちなようです。とはいえ、遺品整理では取捨選択する必要がありますから、普段から好きなものを伝えておくと、遺族が迷わずに済むのではないでしょうか。
また、家族が見つけ出すのに苦戦するのが通帳などの類。「大事なものだから」と隠すようにしまっている人が多いため、遺品整理時に、ありかがわからないことが多いのです。いざという時に、遺族がわかるように保管しておくことがベストだと思います。
私がこの仕事に就いたのは、祖父母が相次いで亡くなり、ゴミ屋敷寸前だったその家の遺品整理をしたことがきっかけでした。賃貸で片づけにタイムリミットがあり、余韻に浸る暇もなく思い出の品々を廃棄することに。
その時に、もっと祖父母の家を訪ねて、片づけたり、話を聞いたりすればよかったと後悔したのです。「金目のものをもらいたい」と言ってくる親戚がいて、嫌な思いもしましたね。これは私の家に限ったことではないと、この仕事を通して知りました。
その経験から、私は不要なものは極力持たないようにしています。