ブルックス氏の考え方に強く共感して

ちなみにジーノ氏の有名な著書『イヤなやつほど仕事がデキる』では、成功者となるには自分のなかに潜む反逆的才能を稼働させ、時にはルールを破ったり、イヤな奴と思われることもいたしかたない、といった方法論が綴られている。

果たして彼女自身、何をしてでも成功をつかもうという志があったことが、このような著作を記す動機となったのかどうかはわからないが、大学を首席で卒業後、出世街道を突き進んできたわけだから、自身が成功者だという自覚はあっただろう。だからこそ、名誉を取り戻すためにハーバード大学を相手に2500万ドルを求める訴訟が起こせるのだと思う。

夫からこの記事が送られてくる直前、私はたまたま同じハーバードで教鞭を執るアーサー・C・ブルックス氏の記した本を読み終えたばかりだった。『人生後半の戦略書』というタイトルのその本は、上記のジーノ氏の考えとはまったく別の方向へ読者を誘う内容となっている。

要は、人間はある程度まで年を重ねたら、老化や衰えを否定したり、今まで以上に頑張ろうとしなくていい。若い頃のように特別な存在としての地位を築くことや、成功を追い求める欲と執着を捨て、穏やかに等身大の自分と向き合うべし、といったことが綴られている。

ブルックス氏はもともとプロのホルン奏者として活躍していたが、音楽的才能に見切りをつけて学者に転身したという人物だ。世間の評価を軸に自らを理想通りのイメージに固めてしまうよりも、自分の本質をしっかり理解し、それに適した生き方をするという彼の考えには、私も強く共感するところがあった。