そうした不安を抱えつつも、子どもが4ヵ月を迎える春頃には仕事に復帰するという高村さん。

「忖度が必要な今の会社に戻ることは、正直ストレスです。体がどこまで受け入れられるかということもありますよね。でも長い目で見ると、安定している今の会社に細く長くいることを選んでもいいのかな、とも思う。子育てだけになってしまうと、集中しすぎて育児の悩みを抱え込むことは目に見えていますし」

ただし、以前と同じストレスを受け続けるのはこりごりだという。会社が変わらないなら自分が変わるしかない。その思いから、コーチングを受けて自分を客観的に見つめたり、参考になりそうな本を読んだりといった努力をしている。

「齋藤孝さんの『余計な一言』を読んでびっくりしたのですが、みなさんは思ったことを全部言わないんですね。世の中の人は7割を口にして、残りの3割は忖度し合っていると知ったらスッとしました」

家庭や子育てに関する不安はないのか聞いてみると、「できた夫だなと思っています。それだけは大当たりでした(笑)」と、夫の高いサポート力に支えられていると話す。

「子どもの出生届などの事務的な手続きから普段の家事に至るまで、幅広くやってくれています。子育てに関しても、私には『愛情を持って抱っこしてあげて』としか言いません。大学時代からの付き合いなので、私の特性を理解してくれているんでしょうね。でもこれからは、職場以外にママ友との面倒な人間関係もこなしていかないといけないですしね。頑張らないと」

 

全教科の教科書とノートを持ち歩く

武田美玖さん(56歳・サービス業)には、幼少期から表れていた発達障害の傾向が何種類かある。忘れ物や遅刻が多い、注意力が低い、片づけができない、自分の思いを人に伝えるのが苦手──。

大人になり、自分が悩まされてきたこれらのことを振り返ってみると、病院で診察は受けていないが、グレーゾーンであると感じるようになった。しかしそのいずれに関しても、努力と強い意志によって改善してきたため、以前ほど生きづらさに悩まされることはなくなったという。

小学生の頃から顕著だったのは、忘れ物と遅刻。忘れ物に関しては、「全教科の教科書とノートを毎日カバンに入れておく」という対策をとっていた。

「今でも、終電を逃しても困らないよう替えの下着まで持ち歩いています。これでも昔に比べたら荷物は減りました」

遅刻は小学生時代から当たり前で、1時間目に間に合うことはまれ。大学生になって恋人ができると、デートの待ち合わせ時間に家を出ることもしょっちゅうだったという。

「『遅刻しちゃいけない』という意識が薄かったんだと思います」