生活必需品から思い出の品、人物まで、自分にとって大切なものを書き出す(撮影:本誌編集部)

何事も元気なうちに

ちなみに、なかなか手放せずにいたカードは、「学校に馴染めない子どものための事業」と、それに必要な「ホームページの作成」だ。実現しようと決めてから約1年も経つのに、雑用が億劫で放り出していたこの2つ。いかに自分にとって大事なことだったのか気づかされた。

そして「命」の終わりを体験し漲ってきたのが、「ギリギリまで手元に置いた夢だもの、元気なうちにさっさとやらなくちゃ!」という、アクティブな気持ちだった。雑然としていた心の中が整理され、浄化されたような心地だ。

プログラムの最後は、参加者同士が感想を語り合う。

40代の女性は、「私と同い年の義妹が、病気で亡くなりました。いつ何が起こるかわからないのだと痛感し、今回参加しました。今を大切に生きたいと思います」と微笑んだ。唯一の男性参加者は、「両親のたび重なる諍いが原因で、妹が心の病気を患ってしまった。最後まで残したカードは、『家族みんなで幸せになる』。これから実践していきます」と、力強く語る。シングルマザーの40代女性は、「子育てに忙殺される日々。大切なものを知れば無駄なものが明確になるかもしれないと思い受講してみましたが、それがしっかり確認できました」と晴れやかな顔だ。

ワークショップは、浦上さんの言葉で締めくくられた。

「今日は、みなさんの〈命日〉です。それとともに、今しっかり蘇りましたので、〈誕生日〉でもあります。自らの生を見つめて、これからの人生を楽しく過ごしてください」

現在、全国各地で24人の僧侶が「死の体験旅行」を開催しているそうだ。一度、味わってみるのもいいかもしれない。