詳しい報告書も送っていただいたのですが、識字障害なので、それが読めない(笑)。ただ最後のまとめの部分を読むと、検査してくださった専門家の方は、僕がテストにどう取り組んでいたか、その様子もじっくり観察していることがわかりました。

たとえば、中には問題ができないと「もう帰る」と投げ出したり、ヒステリックに泣き出す人もいるのかもしれません。僕の場合、自分の得意な分野を使って苦手な部分をフォローしていた、といったことも書かれていた。つまり、障害を持ちながら社会でなんとかうまく対応できるよう、自分なりに工夫してきたことの証しが、そのテストの結果に出ていたようなのです。

また、テストによってどのくらいストレスがかかったか、といったことも見てくれていました。実はテストの途中、何度も「休憩させてください」と言いたかったのです。

 

自分なりに工夫して障害をカバーしていきたい

僕の場合、疲れたりストレスがかかると、読み書きができなくなるだけでなく、脳の疲労が肉体的な疲労にもつながり倒れてしまうのです。若い頃は体力があったので倒れるのは数年に1回でしたが、年齢を重ねるにつれて、だんだん回数が増えていった。時には救急車で運ばれることもありました。

難しいのは、「引き時」です。たとえば、疲れたからといって大事な場を中座したら失礼に当たります。でもそこで無理をすると倒れてしまう。これじゃあ、元も子もありません。

楽しいことでもダメなんです。どれだけ楽しいこと、好きなことでも、無理をしすぎて脳が疲れてしまうと、体がおかしくなる。もともと胃腸も弱いので、そこにも症状が出てしまいます。

学習障害を持っていると知るまでは、自分のことを「バカなうえに体も弱い小林君」と悲観的に考えていました。自分はなんてダメなんだろうという劣等感もありましたし、生きづらさも感じていて。一時は自殺願望もあり、正直、自分で自分をどう扱っていいかわからない時期もありました。

でも障害があることがわかったおかげで、「すみません、休ませてください」と言えるようになった。その点は本当によかったなと思います。

一方で、自分なりに工夫して障害をカバーできないだろうか。それにチャレンジしてみたい、という前向きな気持ちも湧いてきました。そのひとつが朗読の仕事です。

なんと無謀にも、浅田次郎さんの小説『天切り松 闇がたり』を丸ごと一冊朗読するお仕事をお引き受けしたのです。5章あって、1章収録するのに6時間。すごい量です。

自分で言うのもなんですが、そりゃあ膨大な稽古量でした。どれだけ稽古しても読み間違いが多い。読み間違いも識字障害の特徴ですから。