山荘の庭にて、歩行リハビリ中(写真提供◎上野さん)

コロナ禍が始まると、対面での仕事や講演はゼロになり、私は多くの時間を八ヶ岳で過ごすようになりました。以前は車椅子を車に積んで、ドライブに行ったり、温泉にもよくお連れしたものです。コロナでそれは難しくなりましたが、そばでの見守りはたっぷりできるようになりました。

ただ、べったり一緒にいたわけではありません。私の仕事場は別の棟にあるので、朝食が終わると「行ってきます」と仕事場に出かける。いったん帰り昼食をともにして、午後また仕事場へと向かう、というふうに〈通勤〉できたことは幸いでした。

そもそも24時間同居介護だと、家族が追い詰められると思います。寝返りする音や呻き声がすぐそばで聞こえると、気が休まりません。介護する人が、自分だけの空間や時間を持つことは大切です。

「介護される側はひとりでいると心細いのでは?」という質問をよく受けます。いえいえ、そんなことはありません。高齢者のグループリビングを実践されていた西條節子さんから伺った話ですが、がん末期の入居者を片時もひとりにしないよう、みんなでローテーションを組んだそうです。

ある晩、西條さんがその方に率直なお気持ちを尋ねたら、「たまにはひとりにしてください」という答えが返ってきたとか。

人にもよるでしょうが、私のようにおひとりさま生活が長いと、24時間誰かにそばにいられたら鬱陶しい。たぶん色川さんもそうだったのでしょう。訪れてくださるヘルパーの方とは楽しげに会話をかわし、ひとりの時は原稿を書いていました。