日本のケアのクオリティは高い

介護に携わった3年半で実感したのは、日本の介護保険の威力です。訪問介護、訪問診療、訪問歯科、訪問リハビリ等を組み合わせたら自宅介護が可能。その仕組みが日本にはあります。

たとえば訪問入浴。3人1組でいらっしゃるのですが、目の前で浴槽を組み立ててお湯を満たし、看護師がバイタル(呼吸や脈拍など身体の状態を示す指標)を測って、2人の方が「せーの」と浴槽に入れる。見事な連携プレーです。本人は、とても気持ちよさそうにしています。

これまで私は介護に関するフィールドワークを長年続け、海外へも視察に行きました。そうした経験を踏まえて言えるのは、日本のケアのクオリティは本当に高い、ということです。これは誇ってもいい。

私は「おひとりさま」シリーズで何冊かの本を書き、ついには『在宅ひとり死のススメ』を著しました。認知症でもおひとりさまでも、慣れ親しんだ家で幸せな最期を迎えられる。そう、提言してきたのです。

色川さんは訪問客に「上野さんは今、理論を実践中です」と紹介していました。確かに私は、いかに納得のいく「在宅ひとり死」を迎えられるか、ライフワークとして考えてきたことを、介護する立場で身をもって体験した。

色川さんが信頼しておられたヘルパーの方から、「上野さん、かねて言っていた通りの介護をなさいましたね」と言っていただいたのが、大変ありがたかったです。

<後編につづく

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