「いよいよ私自身、《納得のいく人生の終い方》について、待ったなしで考えねばならないお年頃となったわけです」(撮影:本社・奥西義和)
本誌2023年4月号で、歴史家の色川大吉さんの晩年を支え、亡くなる直前に婚姻届を提出した経緯を綴った上野千鶴子さん。一番近くでその死を見届け、〈後期高齢者〉となった今、自分のお金を生前に活かして使う取り組みを始めました(構成=篠藤ゆり 撮影=本社・奥西義和)

<前編よりつづく

自宅で寝たきりの場合、介護費は?

ところで、最期まで自宅で過ごすとどのくらいの費用になるのか。実は施設に入るよりお金がかかりません。

在宅診療医の小笠原文雄さんによると、介護保険の最重度で寝たきりの場合でも、介護費は月36万円。1割負担で3万6000円です。医療費は高額療養費の減免制度があるので、上限で月約5万7600円。多少自費サービスを加えても、月12~13万円くらいでしょう。

ただし──と、ここからは声を大にして言います。この金額は、あくまで介護保険の利用者負担が1割であることが前提です。2015年に2割負担を導入、18年には3割負担が導入され、利用者の負担額は増え続けています。

22年に開かれた厚生労働省の社会保障審議会では、2割負担の対象者を拡大することが議論されました。

しかも「要介護1と2の生活介助を介護保険から外す」など、実質的なサービス低下案が次々と出されています。まったくもって、由々しき問題です。私たちは、闘わなくてはなりません。