私は、認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)の理事長を務めています。WANは、ジェンダー平等の実現に寄与することを目的として、情報を発信し交流を行うために設立された団体です。
メンバーにそろそろ死期を意識なさる年頃の方が増えたので、遺贈セミナーを開いて私も勉強しました。その時、銀行の方が決め手になる台詞を言ったのです。「個人は死にますが、法人は死にません」。うまいことを言うな、と思いました。
友人に言われたひとことも大きかった。「死んでから使うより、生きている間に使いなさいよ」。その通りです。遺贈しても死んだ後では使われ方を知る術はありません。おかげで気持ちが固まりました。それから数年かけて、一般財団法人を設立。法人なので、私が死んだ後に財産遺贈という形をとれます。
もうひとつ、財団という形を考えるようになったきっかけが、『婦人公論』(2019年6月11日号)での橋田壽賀子さんとの対談です。橋田さんは、自分を育ててくれたテレビの世界に恩返しをしたいと思い、優れた番組を顕彰するため橋田文化財団をつくられた。そのお話に大変感銘を受け、「そうか、その手があったのか」と思ったのです。
私が立ち上げた財団の名前は「上野千鶴子基金」。個人名をつけるのにはためらいもありましたが、友人たちから、「あなたの名前はもはやブランド。それだけで財団の目的がわかるから、使わない手はない」と強く勧められ、なるほどと思いました。
基金の主な目的はジェンダー平等の推進に資する活動や研究の助成。私がこの世からいなくなった後もバトンを受け継いでほしい。そう願い、草の根の団体や個人の活動、伸びしろのある研究など、必要な調査や価値ある事業を支援していきたいと思っています。