きれいさっぱり散骨、葬儀も無用

振り返ると、私はさまざまな人や団体に助けられてきました。男女を問わず誰でも世に出るには、引き立ててくれるメンターが必要です。ところが、私より年長の学者はほとんど男性。だからメンターによるセクハラやパワハラも起きやすい。

でもありがたいことに、利害関係も下心もない人たちが、私にチャンスをくださいました。その最たる方が、文化人類学者の山口昌男さんと、経済学者で評論家の栗本慎一郎さんです。お二人の力添えがあって、第一作の『セクシィ・ギャルの大研究』を世に出すことができた。

国際文化会館の「新渡戸フェローシップ」で2年間米国に行かせてもらいましたし、いくつかの財団からいただいた奨学金や文部科学省からの研究費のおかげで、チームを組んでフィールドワークもできました。

色川大吉さんにも学恩があります。戦争中の話や歴史的なできごとなど、たくさんの話をしてくださった。私が歴史研究に赴き、憲法を論じるようになったのは、この人の影響でした。

今までに受けた数々の恩を、次の世代に送りたい。財団設立は、いわば「恩送り」のためです。奨学金事業も計画中。これも近い将来、ぜひ実現したいと思っています。

個人で使いきれないお金は次世代のために使い、私は最後、きれいさっぱり散骨していただく予定です。葬儀も無用。色川さんも、「墓はいらぬ。散骨で」という主義でした。

望み通り、さらさらな真っ白い粉となって戻ってきたお骨を見て感じたのは、ある種の清々しさ。でもやっぱり悲しいです。別れの時を思い出すと、今もつらい。それが正直な気持ちです。