イラスト:小林マキ
年齢とともに、耳の機能は低下し、聞こえづらくなっていきます。でも、歳のせいだからと諦めなくてはならないのでしょうか。耳をいたわり、少しでも“聴く力”をキープするための生活術を紹介します
(イラスト/小林マキ 取材・文・構成/岩田正恵《インパクト》 デザイン/米山和子《プッシュ》)

音を脳に伝える電気信号が減少

小さな音や高い音が聞き取りにくくなった、聞き間違えが増えた……。これらに思い当たる人は加齢性難聴の可能性があると話すのは、慶應義塾大学名誉教授で、オトクリニック東京院長の小川郁先生です。

「人間は、耳で集めた音を電気信号に変えて脳に伝え、音や言葉として認識します。ところが、加齢で血流が滞ったり、代謝が悪くなったりすると、音を電気信号に変える有毛細胞が劣化して、電気信号の量が減少。すると脳にうまく信号が届かなくなり、音が聞き取りづらくなるのです。有毛細胞は再生したり増えたりしないため、一度聴力が衰えてしまうと、残念ながら元の状態に戻ることはありません」(小川先生。以下同)

加齢による聴力の低下は、40代ごろから始まり、少しずつ進行するため自覚しづらいようです。

「家族や友人から、テレビの音量や話し声が大きいと指摘されて初めて自覚するケースが多いですね。イヤホンを着けて大音量で音楽やラジオを聴くなど、大きな音にさらされる時間が長い人ほど難聴が早く始まり、進行スピードも速い傾向にあります」