2002~2016年の間に8回行ってきた僕の調査では、「はじめて中絶を受けたときの気持ち」を聞くと、「胎児に申し訳ない」という回答が5~6割、「自分を責める気持ち」が2割近くを常に占めました。読者アンケートも同様で、悔いる声がいくつも見受けられますね。

人の営みというのは理路整然としたものばかりではないし、医学的に100%の避妊法がない以上、計画外の妊娠は起きうることです。中絶は望ましいことではないけれど、産むことだけが美徳でもないから、できれば「人生において必要な選択であった」と言える決断をしてほしい。そして、なにより繰り返さないでほしい。でもアンケートを見てもわかるように、中絶経験者の4割が、複数回中絶しているのです。

これは日本の特徴でもあります。避妊法があくまでコンドームと腟外射精。戦後、家族計画特別普及事業の一環として政府が生活困窮者にコンドームを無料提供していたこともあり、いつしか避妊を男性任せにする国になってしまった。

フランスなどでは、女性の多くが10代からピルを服用しはじめると聞きます。女性がピルを飲み、性感染症防止のために男性がコンドームをつける。この二重防御によって男女の関係が対等になり、安心安全なセックスが可能になるのです。妊娠するからだを持つ以上、避妊は相手任せにせず、自分の身を守ってほしいと思います。

医療の側の責任も感じますよ。繰り返さないでほしいから、僕なら中絶した日を月経初日として、ピルを飲んでもらう。あるいは子宮内避妊具・避妊システムを入れることもできますし。中絶を選択する事情を聞き、将来の中絶を防ぐ方法を提示する。そんな対応も必要なのではないでしょうか。

中絶すると決めた以上、後悔してほしくない。読者のなかには70歳を超えてもなお悔い続け、供養する人もいましたね。それで心が晴れるならいいけれど、後悔の念に縛られるのは、とても悲しいことです。中絶薬が承認されたいま、中絶を選択するとはどういうことか、経験者もそうでない方も、考えてもらえたらと思っています。