夏が過ぎ、少し涼しくなってきた頃に咲き始める「金木犀」。どこからともなく漂ってくるあの甘い香りを嗅ぐと秋を実感しますよね。近年は金木犀の香りを採り入れたアイテムが流行していて、この時期になるとあちこちのお店で金木犀のシャンプー、ハンドクリーム、香水などが販売されているのを見かけます。甘く優しい香りとオレンジ色の可愛らしい花に惹きつけられる人は多いようです。
金木犀ってどんな植物?
金木犀は、9~10月にオレンジ色の小花を咲かせる常緑樹です。原産地である中国から、江戸・明治時代ごろに輸入されたといわれています。
学名は「Osmanthus fragrans var. aurantiacus Makino」。「Makino」と聞いてピンときた人もいるかもしれませんが、命名したのは日本の植物学者である牧野富太郎です。NHK朝ドラ『らんまん』の主人公のモデルに選ばれたことで、近頃話題になっている人物ですよね。
金木犀はイチョウやソテツと同じ雌雄異株(しゆういしゅ:雄花だけが咲く個体と雌花だけが咲く個体に分かれている植物)ですが、日本には雄株しかないとされています。これは、花付きがよく香りの強い雄株のみが中国から輸入され、その後挿し木で増やされていったからだという説があります。金木犀が毎年ほぼ同じタイミングで一斉に花を咲かせるのも、挿し木によって増やされたことにより多くの木が同一の遺伝子を持っているためだと考えられています。
このように、秋になると一斉に咲いて独特の香りを漂わせることから、金木犀は「秋の風物詩」としても親しまれています。しかし、日本全国どこでも見られるというわけではありません。北海道や東北の寒冷地では育たないため、金木犀の名前は知っていても香りは知らないという人もいるようです。