(構成=編集部 撮影=本社 奥西義和)
先入観に縛られた人がもどかしい
住まいが南埼玉なもので、赤羽は近いんです。関西出身なんですが、こちらに移ってきてすぐ、赤羽という飲み屋街が近くにあるそうだ、と知りまして。で、実際に来てみたら、関西っぽかったんですよ。赤提灯が並んでいるところとか、雑多な感じとか。東京なのにホーム感があって(笑)、親しみが持てるので、好きになりました。
赤羽は飲み屋街の中に小学校があったりして、老いも若きも、幅広い年代の人たちが生活している街ですね。
『華ざかりの三重奏』(双葉社)を読んだ方から「なんで60歳の気持ちがわかるんですか?」と訊かれたりもするんですけど、別にその年代の知り合いが特別に多いわけではありません。
私は、国に切り捨てられてきたロスジェネ世代ですから、10年後、20年後に自分自身がどうなっているのかとか、考えがちなんです。社会や制度などがどうなっていくのか、その中で自分がどう生きていくのか、いろいろなパターンをシミュレートしているので、そのせいかもしれません。
女性主人公で書くことが多いのは、結局のところ、自分自身が女なので、彼女たちの生きづらさとか、どういうところでつまずくかとか、悩んでいるかとか、想像しやすいからです。自分が生み出した登場人物なのに、「もうちょっとこう生きたほうが楽なのに」などと、もどかしかったりして。(笑)
おじさん主人公で書くこともあるんですけど。男女問わず、先入観に縛られた人たちがもどかしいんですよね。その感情をベースに、たぶん私は、小説を書いているんだと思います。そう言いながら私も、知らず知らずのうちに自らを先入観で縛っているかもしれないし、自分自身の「解放」も兼ねて。こう生きてもいいんじゃないのかな、という想いを込めて、書いているのかもしれません。