夢の横綱に向かって
熱海富士は、連日やる気満々で、早い時間から花道で体を動かし、土俵に上がっても緊張でコチコチの様子がなく、最後の仕切りの前に左右の足を交互に動かして土俵の土を後ろに蹴ってリズミカルに足踏みをする。多い時はそれを左右合計8回やる。闘牛のようだ。千秋楽の本割も優勝決定戦でも、このルーティンをやっていた。
土俵下の審判の親方や観客の皆さんに土が飛ばないかと私は心配していたが、本日テレビに近づいて確認し、それほどの後ろ蹴りではなかった。
優勝決定戦では、熱海富士は突進したものの、貴景勝にはたき込まれた。あっけない相撲だった。熱海富士はルーティンと相撲を磨いて、来場所も頑張って欲しい。将来は、横綱土俵入りをルーティンなしで見せてもらいたい。
貴景勝は土俵下での優勝インタビューで、熱海富士の素晴らしさと将来への期待を話し、「自分の20歳位の事を思い出し、初心に戻って頑張っていかなくてはいけないと思っている」「もう一回夢の横綱に向かってどうしたらいいか7月場所(名古屋場所)の間、考えてきたので、その夢に向かってもう一度明日から頑張って11月場所(九州場所)に一生懸命備えたいと思う」と、決意を語った。
私は涙が出た。先場所膝の怪我で全休した貴景勝の復活優勝を願っていた。力士は誰もが必死に相撲を取っているが、貴景勝は大関の地位を守り、満身創痍をこらえて、より必死ではないか。
初日の黒星、前半の落ち着かない相撲に「どうした貴景勝!イライラ相撲を取るな!もとの貴景勝に戻れ!」と、ガラス瓶の底の方に湿気で固まってしまったコーヒー粒の瓶を、連日振って応援していたのだ。振ってもコーヒー粒は固まったままだが、貴景勝が優勝して良かった。